転職の年収アップ相場|エンジニアが公的データで確かめる

年収アップの相場を「転職前後の変化」と「求人側の提示額」の2つに分けて示した図解
テックスカウト編集部

転職の年収アップの相場とは、転職した人の賃金が前職と比べてどれだけ動いたかの目安です。この相場に金額で答えている公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。公表されていたのは、動いた向きと大きさを階級で分けた割合のほうです。

金額の側で確かめられたものもあります。厚生労働省のjob tag(職業情報提供サイト)は、職業ごとの求人賃金を月額で掲載しています。編集部が2026年9月1日に5職業のページを開いた範囲では、29.0万円から40.4万円の幅がありました(令和7年度)。これは求人票に書かれた月額であり、あなたの年収がその差だけ動くという意味ではありません。

この記事では、どこまでが公表値で、どこからは取れないのかを分けます。そのうえで、公表値を自分のケースに当てはめる手順を4つに整理しました。金額の相場が出てこない理由も、途中で書きます。

転職の年収アップの相場とは、前職の賃金からどれだけ動いたかの目安です

転職の年収アップの相場とは、転職した人の賃金が前職と比べてどれだけ動いたかの目安です。在職者がいくら受け取っているかという「水準」とは、測っている対象が違います。同じ「相場」という言葉でも、指しているものが同じとは限りません。

この違いを外すと、開く統計を間違えます。水準を知りたいなら、在職者の賃金を集計した統計を見ます。上がり幅を知りたいなら、転職の前後で賃金がどう動いたかを集計した統計を見ることになります。

そのうえで、上がり幅の相場は次の2つに分けられます。編集部はこの2つを別々に扱います。

  1. 変化の側——転職した人の賃金が、前職と比べてどう動いたか
  2. 金額の側——求人を出す側が、いまいくらで募集しているか

この2つは調査も対象も違うため、足したり引いたりできません。本記事でも別の節に分けて置きます。

編集部の運営メンバーは、採用側として求人の条件を決める場に立ったことがあります。そこで見た順序は、応募者の値札(市場価値)が先にあって金額が決まるのではなく、その枠に用意された予算が先にあるというものでした。ただしこれはエンジニア職の現場ではなく、Webマーケティング領域での経験です。

変化の側|公表されているのは金額ではなく「変化の階級」です

公表されているのは、上がった金額ではありません。厚生労働省の雇用動向調査は、転職した人の賃金が前職と比べて「増加」したか「減少」したかを、割合で集計しています。金額そのものは、この集計には出てきません。

この集計を読むときの前提を2つ書きます。どちらを落としても、数字の指す範囲がずれます。

  1. 数値はすべて全産業の集計です。IT・情報通信業だけを取り出した値ではありません
  2. 比べている相手は前職の賃金です。転職が原因で動いたことを示す集計ではありません

なお、この集計に載る割合の数値そのものは本記事では扱いません。年齢階級ごとの読み解きは増えた人と減った人の割合を年齢階級別に並べた記事が担当しています。金額の相場が出てこないのは、公表の粒度が「割合」で止まっているからです。

概況は増減を「1割以上か、1割未満か」までしか割っていません

編集部は2026年9月1日に概況を開いて、列の構成を数えました。行の見出し(区分)の欄を除くと、数値が入る列は9つです。「計」「増加」「1割以上の増加」「1割未満の増加」「変わらない」「減少」「1割未満の減少」「1割以上の減少」「増加−減少」でした。

(出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年8月26日公表)「転職入職者の状況」表6「転職入職者の賃金変動状況別割合」・表7「就業形態・雇用形態別転職入職者の賃金変動状況」。数値は2024年・全産業であり、IT・情報通信業に限った値ではありません: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf )

つまり増減の大きさは、「1割以上か、1割未満か」の2段階までしか割られていません。3割上がった人も、1割ちょうど上がった人も、同じ「1割以上の増加」に入ります。この粒度では、上がり幅を金額でも倍率でも取り出せません。

統計表まで降りると、区分は7つに分かれています

概況に無いことは、集計が無いことを意味しません。編集部がe-Statに収録された同じ調査の統計表を開いたところ、賃金変動は次の7区分で集計されていました。

  • 3割以上増加
  • 1割以上3割未満増加
  • 1割未満増加
  • 変わらない
  • 1割未満減少
  • 1割以上3割未満減少
  • 3割以上減少

(出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「雇用動向調査 入職者13 性、産業(中分類)、年齢階級、賃金変動区分別入職者数」の分類事項。2026年9月1日に編集部が確認。このデータベースの収録年次は2014年から2021年までです: https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003376334 )

概況には現れない「3割以上増加」という階級が、統計表側には用意されています。大きく上振れした人を切り出す区分は、ここまで降りれば用意されています。

さらに統計表側には、産業や入職経路で切った集計もあります。令和6年(2024年)分では次の2つです。

表番号 表題
第8表 性、産業(中分類)、企業規模(GT・E)、年齢階級、賃金変動区分別入職者数
第14表 産業(大分類)、企業規模(GT.E)、性、入職経路、離職期間、賃金変動区分別入職者数

(出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「雇用動向調査」令和6年〔2024年〕の結果表。第8表は2026年3月24日公開、第14表は2025年8月26日公開。いずれも2026年9月1日に編集部が表題・公開日を確認)

概況の「転職入職者の状況」には、産業別の集計がありません。そのため「IT業界の賃金変動は分からない」で話が止まりがちですが、止まるべき場所は概況ではなく統計表のほうです。

ただし、編集部はこの2表のセル値を取得できませんでした

この2表のセル値は、編集部が取得できませんでした。e-Statの当該ファイルまでは到達しましたが、提供形式が表計算ソフト用のファイルのみで、本作業では表の中身を読み出せませんでした。

したがって本記事は、区分がどう分かれているかまでを書きます。割合の数値は1つも書きません。取り出せなかっただけであり、集計が無いという意味ではありません。

あなたが自分で確かめる場合は、上の表番号で引けます。編集部も次回の更新でこの数値を取り直します。

雇用動向調査の概況と統計表で賃金変動の区分の細かさが違うことを示した模式図

金額の側|求人を出す側が提示している月額なら公表されています

求人側が出している金額は、職業ごとに月額で公表されています。厚生労働省のjob tagは、職業ページに求人賃金(月額)を掲載しています。編集部が2026年9月1日に5職業のページを開いた結果は、次のとおりです。

職業(job tagの職業名) 求人賃金・月額(令和7年度)
ヘルプデスク(IT) 29.0万円
プログラマー 33.9万円
システムエンジニア(基盤システム) 35.3万円
システムエンジニア(受託開発) 36.4万円
プロジェクトマネージャ(IT) 40.4万円

(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)各職業ページ。2026年9月1日に編集部が確認した掲載値。同サイトはこの項目を「ハローワーク求人統計データ」の令和7年度分として掲載しています)

この表を使うときの前提を4つ書きます。単位と調査を取り違えると、別のものを比べることになります。

  1. これは月額であり、年収ではありません。賞与も残業代も含まれないため、本記事では年収に換算していません
  2. 求人票に書かれた金額であり、在職者が受け取っている賃金ではありません。在職者の水準は別の統計です
  3. 前の節の雇用動向調査とは別系列です。調査も対象も違うため、2つの数字を足したり引いたりしていません
  4. 編集部が確認したのはこの5職業だけです。job tagには他にも多数の職業が掲載されており、IT系の職業全体の範囲ではありません

この表から言えるのは、次の1つだけです。編集部が確認したこの5職業では、最も低いヘルプデスク(IT)と最も高いプロジェクトマネージャ(IT)の差が月額11.4万円でした。この11.4万円は編集部の算出であり、原典に載っている値ではありません。

この差は、職業区分を動かしたときに求人側の提示額がどれだけ変わるかの目安にはなります。ただし、あなたの年収がその差だけ動くという意味ではありません。同じ職業区分の中にも幅があるからです。

年収の枠そのものが何で決まっているのかは、本記事では扱いません。上がり幅ではなく水準そのものの決まり方を扱った記事が担当しています。

年齢階級で切った実額は40代の在職者の賃金水準を階級ごとに示した記事にあります。SESという契約形態で受け取る側の金額は、SES契約で働く人の給与がどう決まるかの整理が扱っています。

job tag掲載の5職業の求人賃金(月額・令和7年度)を並べた横棒グラフ

相場を自分のケースに当てはめる4つの手順

先に決めるのは金額ではなく経路です。どの職業区分からどの職業区分へ動くのかが決まらないうちに平均値を集めても、比べる相手が決まりません。編集部はこの順序で使うことを勧めます。

手順1|いまの自分の給与を月額に直す

求人賃金は月額で公表されているため、比べる側も月額にそろえます。年収から月額を出す場合は、賞与を除いた月々の支給額を使ってください。

賞与込みの年収を12で割ると、月額が実際より大きく出ます。比べる相手が月額である以上、そろえるべきはこちら側です。

手順2|行き先の職業区分を1つに決める

「エンジニア」のままでは、公表値のどれと比べればよいかが決まりません。job tagの職業名は、ヘルプデスク・プログラマー・システムエンジニア(基盤システム)のように分かれています。まず自分がどの名前で動こうとしているのかを1つ選びます。

このとき、いまの区分と行き先の区分の2つを書き出してください。上がり幅を見るには、2点が要ります。

手順3|求人賃金の水準と並べる

手順1の月額と、手順2で選んだ2つの区分の求人賃金を、同じ表に並べます。このとき足し引きするのは、同じjob tagの求人賃金どうしだけにしてください。

雇用動向調査の割合と混ぜないでください。別の調査であり、混ぜた時点で意味のない数字になります。

手順4|実際の求人票とスカウトの提示額で上書きする

公表値は平均であって、あなたに提示される金額ではありません。最後は実物で上書きします。求人票の賃金欄と、スカウトで届く提示額が、あなたにとっての相場です。

このとき見るのは金額だけではありません。求人票には就業の場所とその変更の範囲も書かれており、常駐先が変わる働き方かどうかはここに現れます。金額が同じでも、この欄が違えば別の条件です。

40歳前後・商流下層のあなたが、この相場を読むときの注意

上の数字は、あなたの状況をそのまま説明するものではありません。編集部が挙げた注意は3つです。

  • 雇用動向調査の数値はすべて全産業です。二次請けのSESで基幹システムの保守改修を担う40代の業務系SEに限った集計ではありません
  • 下振れの階級も同じ集計にあります。「1割以上の減少」「3割以上減少」という区分が用意されている以上、上がる側だけを見る読み方は片側だけの読み方です
  • 求人賃金は求人票の金額です。入社後に受け取る額でも、在職者の平均でもありません

家族と住宅ローンがあるなら、下がる側も見たうえで動く順番を決めてください。相場を読む目的は、上がると確認することではなく、動いたときの振れ幅を先に知っておくことです。

商流の下層にいると、いまの値付けと市場の値付けの差が大きくなりやすい場所にいます。差が大きいことは、上がる保証でも下がる保証でもありません。言えるのは、振れ幅が大きくなりやすいということだけです。

編集部の見立て|相場は、動く前には確定しない数字です

ここから先は編集部の意見です。事実として書いた部分とは切り分けて読んでください。

「転職でいくら上がるか」の相場を先に確定させようとする読み方を、編集部は勧めません。理由は本文のとおりで、公表されているのは変化の階級と求人側の提示額の2つだけだからです。上がり幅そのものは、動いたあとにしか確定しません。

代わりに先に確定させられるものがあります。いまの自分の月額と、行き先の職業区分の2つです。この2つが決まっていれば、届いた提示額が高いのか安いのかをその場で判断できます。

何を最優先にするかで、やることは変わります。そのうえで軸ごとに言い切ります。

  • 年収を最優先するなら:数字を2つそろえるところから始めてください。いまの月額と行き先の区分が決まっていなければ、提示額が届いても比べる相手がありません
  • 時間や働く場所を優先するなら:金額の相場より、求人票の「就業の場所の変更の範囲」の欄のほうが効きます。同じ金額でも、この欄が違えば生活の可変性が変わります
  • いま動く気がないなら:数字だけ先に出しておいてください。差が小さいと分かった場合も、留まる理由を自分の言葉で説明できるようになります

測る道具と読み方の全体像は相場と自分の間にある差を数字にする作業の入口にまとめています。手を動かす順番のほうは相場と手元の額を突き合わせるところまでを試す手順が担当です。

編集部の側に、あなたを急がせる理由はありません。スカウトへの登録は転職の約束ではなく、あなたに付く値札を1回だけ測る作業だからです。動く時期は、あなたの都合で決めてください。

よくある質問

IT 転職 年収アップ どれくらい?

IT職に限って上がり幅を金額で示した公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。確認したのは、令和6年雇用動向調査結果の概況「転職入職者の状況」と、e-Statに収録された同調査の統計表の分類事項です(いずれも2026年9月1日に確認)。

雇用動向調査の集計は全産業であり、概況の側には産業別の内訳がありません。統計表側には産業(中分類)別の表がありますが、編集部はそのセル値を取得できていません。

転職 年収アップ 何パーセント?

公表されているのは、パーセントそのものではなく「階級」です。編集部がe-Statで確認した同調査の統計表では、賃金変動が「3割以上増加」「1割以上3割未満増加」「1割未満増加」から「3割以上減少」までの7区分で集計されていました(確認したデータベースの収録年次は2014年から2021年)。

つまり「平均で何パーセント上がるか」という形の値は、この集計からは出てきません。出てくるのは、どの階級に何割の人が入ったかという割合のほうです。

転職で年収300万アップは可能?

編集部が確認した公表データからは、可否を判定できません。雇用動向調査の集計に金額の区分はなく、編集部が確認した区分の上限は「3割以上増加」でした。3割以上がどこまで伸びるのかは、この区分からは読み取れません。

求人側の金額なら公表されています。編集部が2026年9月1日に確認した5職業では、最も低い職業と最も高い職業の差が月額11.4万円でした(編集部の算出)。これは月額であり、年収に換算していません。

転職 年収アップ 成功 いくら?

「成功」の金額を示す公表値は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。公的統計は成功・失敗という区分を持たず、増えたか減ったかの割合だけを集計しています。

編集部は、金額の目標を先に置くやり方を勧めません。先に決まっていなければならないのは、どの区分からどの区分へ動くのかという経路のほうだからです。

まとめ|相場は「いくら上がるか」ではなく「何が公表されているか」から読む

  • 定義:転職の年収アップの相場とは、転職した人の賃金が前職と比べてどれだけ動いたかの目安。在職者の「水準」とは別のもの
  • 金額の相場:上がり幅を金額で示した公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たらなかった(2026年9月1日)
  • 概況の粒度:雇用動向調査の概況は、増減を「1割以上か、1割未満か」の2段階までしか割っていない。数値はすべて2024年・全産業で、IT・情報通信業に限った値ではない
  • 統計表の粒度:編集部がe-Statで確認した同調査の統計表では、賃金変動が7区分(3割以上増加〜3割以上減少)で集計されていた(確認したデータベースの収録年次は2014年から2021年)。産業(中分類)別・入職経路別の表も存在する
  • 取得できなかったもの:第8表・第14表のセル値。提供形式が表計算ソフト用のファイルのみで読み出せなかった。集計が無いという意味ではない
  • 求人側の金額:job tag掲載の求人賃金は、確認した5職業で月額29.0万円〜40.4万円(令和7年度)。月額であり年収ではない。雇用動向調査とは別系列で、足し引きしていない
  • 編集部の見立て:上がり幅は動いたあとにしか確定しない。先に確定させられるのは、いまの月額と行き先の職業区分の2つ

上がり幅は、動く前ではなく動いたあとにしか確定しません。だから先に確定させられるのは、いまのあなたの月額と、行き先の区分だけです。この2つを書き出しておけば、次に届いた提示額が高いのか安いのかを、その場で自分の言葉で説明できます。

※本記事の統計に関する記述は、記載の一次資料に基づく一般的な情報です。個別の給与・待遇の判断は、勤務先の規程や求人条件、必要に応じて公的機関・専門家への確認を併せて行ってください。


参考・出典


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