エンジニアの市場価値とは|40代からの「値札」の測り方完全ガイド
エンジニアの市場価値は、想像するものではなく実測するものです。あなたが40歳前後で、二次請けSESの単価が3年上がっていなくても、それはあなたの値札(市場価値)そのものではありません。開発系エンジニアの平均年収は578.5万円、上流の基盤系SE・PMは889万円です(厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」2026年時点掲載値)。
自分がこの相場のどこにいるかを知らないまま、「もう遅い」と店じまいするのは早すぎます。この記事では、公的統計と実在の測定手段だけを使って、市場価値の定義・測り方・読み方・動かし方を最初から最後まで解説します。
結論:市場価値は「測る→読む→動かす」の3ステップで扱う
結論から言います。市場価値(=あなたの値札)への向き合い方は、次の3ステップがすべてです。
- 測る——スカウトサービス・エージェント面談・求人票・公的統計の4つの測定器で、自分に付く値札を実測する
- 読む——実測値を年齢別・職種別・スキルレベル別の公的データと突き合わせ、現在地とギャップの理由を特定する
- 動かす——値札が動く一手(商流を上る・身を置く場所を選び直す・積み方を変える)を選び、転職・社内交渉・現状維持のどれに使うかを自分で決める
多くの記事は「市場価値を高める方法」から始めますが、順番が逆だと編集部は考えます。現在地を測っていない人が高め方だけ学ぶのは、体重計に乗らずにダイエット法を集めるのと同じです。まず測る。話はそれからです。
この記事は、40歳が見えてきた(または越えた)、商流の下層で働くエンジニアを読者に想定しています。以降のデータ・事例もその前提で選んでいます。
エンジニアの市場価値とは|年収でも自己評価でもなく「市場が付ける値札」
エンジニアの市場価値とは、採用市場があなたの経験・スキルに対して提示する条件(年収・ポジション)の相場のことです。つまり「いま転職市場に出たら、いくらの値札が付くか」であり、次の2つとは別物です。
- 現在の年収ではない——今の給与は「所属企業の給与テーブルと商流上の位置」が決めた社内の値付けです。市場の値付けとは一致しません。実際、転職した人の賃金は「増加」が40.5%と、「減少」の29.4%を上回っています(全産業・2024年。出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」)。社内の値付けが市場より安い人が、それだけいるということです
- 自己評価でもない——「40代のSESなんてもう需要がない」という不安も、「経験17年あるから大丈夫」という楽観も、測っていない以上はどちらも想像です
値札の水準を決める原理はシンプルで、「そのスキルセットへの需要」と「供給(同じことができる人の数)」の掛け算です。だから同じ人でも、どの市場に出すか(職種・業界・商流のどこか)で値札は変わります。ここが本記事の後半で効いてきます。
そして40歳前後の読者にこそ強調したいのは、「転職する気がなくても、値札は測っておく」が正解だということです。40〜44歳男性の転職入職率は6.8%と、25〜29歳(15.1%)の半分以下です(2024年・全産業。出典:同調査)。この年代では「動かない」人が多数派を占めます。
だからこそ、測ったことがある人とない人の情報格差が最も大きい年代でもあります。測るのは転職の約束ではありません。相場を見ずに持ち家の売却を悩む人がいないのと同じで、値札を知らないまま現職に不満を持つのも感謝するのも、判断の土台がない状態です。
ステップ1|値札を測る:4つの測定器と使い方
最初の一歩は、頭の中の不安を実測値に置き換えることです。測定器は次の4つで、上から順に「手間が少なく、実測に近い」ものです。
| 測定器 | 何がわかるか | 使い方のポイント |
|---|---|---|
| スカウトサービス | 経歴を見た企業・エージェントが実際に付ける値札(提示年収・ポジション) | 職務経歴を登録して待つだけの定点観測。届くスカウトの質と提示額の変化が、値札の推移そのもの |
| 転職エージェント面談 | 「いま動いたらどのレンジか」のプロの見立て | 無料で年収相場のフィードバックが得られる。ただし助言には報酬構造のバイアスが乗る(後述) |
| 求人票 | 自分の経験で応募要件を満たす求人の提示年収レンジ | 「応募する」必要はない。要件と年収の対応表として読む |
| 公的統計・job tag | 年齢別・職種別・スキルレベル別の客観相場 | 個別の値札ではなく「相場の物差し」。次章で実数を示します |
なぜハローワークではなく、スカウト・エージェントで測るのか
ハローワークに出た求人が就職に結びつく比率が、この職種では際立って低いからです。ハローワーク統計(令和8年3月)では、情報処理・通信技術者の有効求人50,307人に対し、ハローワーク経由の就職件数は461件でした。有効求人に対する就職件数の比率は約0.9%で、全職業計の約5.5%を大きく下回ります(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年3月分。比率は編集部算出)。
この指標の読み方には注意が必要です。分母は月間の有効求人(ハローワーク求人のストック)、分子は同じ月のハローワーク経由の就職件数(フロー)です。つまり「全採用のうち何%が公的窓口を通ったか」を示す数字ではありません。
それでも、ハローワーク求人が就職に至る比率がこの職種で際立って低いことは読み取れます。エンジニアの値札が実際に金額として提示されるのは、スカウトサービスとエージェント経由の民間市場だと編集部は考えており、測定器もそこに置くことを勧めます。
測定器の「収益構造」を知ってから使う
無料の測定器には、必ず運営側の収益構造があります。転職エージェント(有料職業紹介)の報酬は転職成立時に採用企業が払う成功報酬で、スカウトサービスも採用企業側が利用料を負担する料金体系が一般的です。つまり、費用を払っている「客」は主に採用企業であり、あなたは商品側です。だから、届いた提示・助言は「誰の財布から出た言葉か」を確認してから聞くのが編集部の基本姿勢です。
- 現職と同単価・同内容のSES案件スカウトが大量に届くのは、あなたの値札が低いからではなく、「登録情報と機械的に一致した在庫」が送られているだけのケースが多い、と編集部は見ています。届いた1通を送信元・経歴への言及・提示レンジで仕分ける手順はエンジニアのスカウトメールの見分け方で解説しています
- 市場価値「診断ツール」の多くも、エージェント・フリーランスエージェントへの登録導線です。診断値は参考値として受け取り、鵜呑みにしないことをおすすめします。登録不要のセルフ診断から実測までを4手順に分けた実行手順はエンジニアの市場価値診断のやり方と結果の読み方で解説しています
- エージェントの「見立て」は貴重ですが、成約しやすい方向(動きやすい求人)に寄る構造があります。情報は全部取り、判断だけ渡さないのが使い方の原則です
測定器そのものの仕組み——誰が費用を負担し、どの型のサービスが何を測れるのか——はスカウトサービスの報酬構造と40代での使い方で扱っています。
編集部の実測例:測っていなかった時代と、測り続けている今
編集部の運営メンバー(40代)は、エンジニアではなくWebマーケティング職です。それでも40代の現在まで管理職クラスのスカウトを継続的に受信しており、これを「値札の定点観測」として使っています。原点は2012年、初めて届いたスカウトがきっかけの転職で、年収が大きく上がった経験です。
当時は「自分は安く見られている」と感じながら、値札を一度も実測したことがありませんでした。その感覚が実際の値札とずれていなかったと確認できたのは、スカウトを受けて年収が動いてからです。もっと早く測っていれば、もっと早く動けたはずです。職種は違っても、「測らないまま働き続けると、安値が普通になる」という構造は同じだと考えています。
ステップ2|値札を読む:公的データでみる相場と現在地
測った値札は、相場と並べて初めて意味を持ちます。ここでは誰でも無料で確認できる公的データだけで物差しを作ります(数値はいずれも記事執筆時点の最新公表値。時点を必ず添えます)。
開発系エンジニアの平均は578.5万円、上流系は889万円
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」(令和7年賃金構造基本統計調査に基づく2026年時点の掲載値)によると、
- プログラマー・システムエンジニア(受託開発/Webサービス開発/組込み)など開発系職業の平均年収は578.5万円(平均年齢37.1歳)
- システムエンジニア(基盤システム)・プロジェクトマネージャ(IT)は889万円(平均年齢38.3歳)
です(出典:厚生労働省job tag各職業ページ)。注意点として、job tagでは開発系9職業の平均値が同一(統計上同じ調査区分を共有しているとみられる)のため、「プログラマーとWeb系SEの差」のような細かい比較には使えません。ただ、開発系と上流系(基盤・PM)の間に約310万円の断層があることは読み取れます。この断層が、後述する「商流と工程」の話に直結します。
開発系と上流系で年収が割れる理由と、そこに商流の位置・企業規模がどう重なるのかは年収が職種区分・商流・企業規模で決まる仕組みで分解しています。job tagの平均年収が職業名ごとの値ではないことも、5職業ページの実査結果として同じ記事にまとめました。
40代の相場は「上がっている」——情報通信業の賃金カーブ
「40代になったら市場価値は下がる一方」というイメージは、エンジニアが属する情報通信業の賃金データとは一致しません。次の表は産業平均(全産業計)ではなく、産業別にみた「情報通信業」の値です(一般労働者・男女計。2025年6月分)。
| 年齢階級 | 情報通信業の所定内給与(月額) |
|---|---|
| 30〜34歳 | 36万3,400円 |
| 35〜39歳 | 41万100円 ※原典に参考値注記あり |
| 40〜44歳 | 45万6,800円 |
| 45〜49歳 | 49万1,700円 |
| 50〜54歳 | 49万1,300円 |
| 55〜59歳 | 51万6,300円(ピーク) |
(出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」「(5)産業別にみた賃金」第5-1表「産業、年齢階級別賃金及び対前年増減率」〔概況10ページ〕。同概況の「賃金」は2025年6月分の所定内給与額を指します)
情報通信業のピークは55〜59歳です。ただし一直線に上がるわけではありません。45〜49歳の49万1,700円に対して50〜54歳は49万1,300円で、50代前半でいったん横ばい〜微減を挟んでから55〜59歳の最高額に届きます。それでも40歳前後は、このカーブの上り坂の途中にあたります。
この数字は産業別の系列で、全産業計とは別物です。全産業計(男女計)は40〜44歳36万4,300円・ピーク55〜59歳39万6,200円であり、表に示した30代以降の各階級では情報通信業のほうが高い水準にあります(同概況「(2)性別にみた賃金」第2表・概況7ページ)。
「情報通信業の水準は40代でまだ上がるのに、自分の単価は3年据え置き」——もしそうなら、下がっているのは「40代の相場」ではなく、「あなたの現在の置き場所の値付け」です。これは悲観材料ではなく、場所を変えれば動く余地があるという材料だと編集部は読みます。
なお、この産業別のカーブは月額(所定内給与)であって年収ではありません。40代の年収の実額を職種別に知りたい場合は、同じ賃金構造基本統計調査の職種(小分類)×年齢階級の表を使います(40〜44歳の年収換算はソフトウェア作成者で約634万円、システムコンサルタント・設計者で約1,161万円)。実額の一覧と自分の位置の特定手順は40代エンジニアの年収の実額とレベル別の相場で詳しく解説しています。
職種で切った水準を見たい場合は、セキュリティ職の掲載値を検証した記事があります。同じ公表データでも、職業名ごとの集計になっている項目とそうでない項目が混ざっていることを、公表データが職種の粒度で何を返してくるかを検証した記事で示しました。
職業名で相場を引くときは、その数字が何の平均かを先に確かめてください。同じ金額が複数の職業名に付いていることもあります。職業名ごとの平均が返ってこない例を実査で示した記事で、AI職を材料に検証しました。
呼び名の側から相場を引くときは、その呼び名が統計のどの職業に着地するかも確かめてください。1つの呼び名が2つの職業ページに割り当てられていることがあります。1つの呼び名が2つの職業に分かれる例を数えた記事で、Web系の職種名を材料に確かめました。
水準ではなく変化の側を見たい場合は、転職の前後で賃金がどう動くかを扱った記事があります。「年収バグ」と呼ばれる跳ねを公表データで確かめた記録を、跳ねるという言い方を公表データで確かめた記事にまとめました。
相場を「上がり幅」で知りたい場合は、読む統計そのものが変わります。在職者の水準ではなく転職前後の変化を見ることになり、公表の粒度も別です。上がり幅の相場がどこまで公表されているかを確かめた記事
相場を職種名で引くときは、その職種の稼ぎ方が統計の定義に入っているかも見てください。交替制や当直で受け取る手当は、概況の「賃金」の定義から外れています。手当が統計の定義から外れる職種を扱った記事で、インフラ職を材料に確かめました。
職種名で相場を引く前に、その職種名が統計のどの区分に入っているかも確かめてください。区分そのものが他のIT職と別で、名前が除外の側にしか出てこないこともあります。職種名が統計の別区分に入っている例を確かめた記事で、ネットワーク職を材料に確かめました。
職業名の側に、その呼び名の受け皿が用意されていないこともあります。その場合、金額は呼び名ではなく、説明文の当てはまる職業ページの側から返ってきます。名前の欄に無い呼び名で相場を引こうとした記録で、クラウドを材料に確かめました。
相場を引く前に、その統計が誰を数えているかも見てください。この調査が対象にしているのは雇われて働く人で、雇人のいない自営業主は含まれません。雇われていない働き方が賃金の集計から外れる仕組みで、フリーランスを材料に確かめました。
金額の側から人数を数えた表もあります。年間給与額の階級で数えている調査では、1,000万円という区切りが実際に置かれていました。その表がどこまで割れるのかは額の区切りで人数を数えた表がどこまで割れるかで確かめています。
金額を並べる前に、その金額を並べている物差しの側を確かめる手もあります。job tagがレベル別に載せている帯は、在職者の平均とは別の調査から来ています。その出どころはレベル別の帯がどの調査から来ているのかを追った記事で確かめました。

スキルレベル別のレンジ:自分の帯を特定する
job tagにはITSS(ITスキル標準)レベル別の年収レンジも掲載されています(設計・構築系、第一四分位〜第三四分位。2026年時点の掲載値)。
| ITSSレベル(目安) | 年収レンジ |
|---|---|
| レベル1〜2(基本情報技術者レベル相当まで) | 420万〜620万円 |
| レベル3(応用情報技術者レベル相当) | 450万〜700万円 |
| レベル4(高度試験レベル相当) | 500万〜780万円 |
| レベル5以上 | 600万〜950万円 |
| (参考)PM系 レベル3〜5以上 | 600万〜1,100万円 |
(出典:厚生労働省job tag。レベルと資格の対応は目安であり1対1ではありません)
例:41歳・経験17年・二次請けSESで基幹システムの保守改修を担う業務系SE・年収490万円の場合。経験年数だけならレベル3〜4帯(450万〜780万円)が視野に入ります。一方で現年収490万円は、レベル1〜2帯(420万〜620万円)の下位〜中位にとどまります。
第一四分位420万円と第三四分位620万円の中間点は520万円で、490万円はそれを下回るからです。この中間点は編集部の算出であり、中央値ではありません。このギャップの大きさが「実測する価値」そのものであり、ギャップの原因が本人のスキル不足なのか、置き場所の構造なのかを次章で切り分けます。
なぜ40代・商流下層の値札は頭打ちになるのか(個人ではなく構造の話)
単価が上がらない主因は、あなたの努力不足ではなく商流上の位置にあります。これは公正取引委員会の実態調査(2022年6月29日公表)が実数で示しています。
- 多重下請構造では「再委託の都度、中間マージン等が差し引かれるため、下層に行くほど受注金額が低くならざるを得ない」(報告書の原文記述)
- 下請事業者が主に担当する工程は「開発(プログラミング)」が56.6%を占める一方、「ユーザーへの提案・要件定義」はわずか5.5%
- 最終下請の68.6%は資本金1,000万円以下の零細企業で、最終下請の33.5%が商流の中に「実際には何もしない中抜き事業者がいる」と感じている
(出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」2022年6月29日。割合はいずれも受注者側の回答)
この3つをつなぐと、下層で起きていることの正体が見えます。受注金額は商流を下るたびに削られ、回ってくる仕事は下流工程に偏る。だから「上流もマネジメントも未経験のまま40歳」は、怠慢ではなく構造の帰結です。先ほどの578.5万円と889万円の断層は、個人の能力差というより「要件定義・PM経験を積める場所にいたかどうか」の差が大きい、と編集部は考えます。
ここから導かれる結論は一つです。構造が原因なら、構造(身を置く場所)を変えれば値札は動く。次章でその一手を示します。

この商流の仕組みそのものはSESの仕組み・商流・カネの流れの解説、単価がどの水準でどこで削られるのかは単価から給与への配分を公的データで見るで詳しく解説しています。
ステップ3|値札を動かす:40代からの3つの一手
値札は「個人の努力×市場の風向き」の掛け算で動きます。努力の量を増やす前に、掛け算の相手(どの市場に自分を置くか)を選び直すのが40代の定石だと編集部は考えます。一手は3つです。
一手1|商流を上る:同じ職種のまま、元請け・一次請けへ
いちばん再現性が高い一手です。仕事の中身(業務系の設計・開発)は大きく変えずに、中間マージンが差し引かれる回数の少ない側へ移る。前章のとおり、単価を削っているのは商流です。商流を上れば、同じスキルでも値付けの母数が変わり、要件定義・顧客折衝の経験を積める確率も上がります(下請の要件定義担当は5.5%しかない=元請け側にその工程が集中しているということです)。
求人の需給で見ても、job tagの職業別有効求人倍率(令和7年度)は、システムエンジニア(受託開発)2.54倍・同(組込み、IoT)4.26倍と、プログラマー(0.98倍)より設計工程を含む職種側の引き合いが強いことを示しています(出典:厚生労働省job tag。2026年9月1日に編集部が確認した掲載値で、同サイトはこの項目を「ハローワーク求人統計データ」として掲載している。ハローワーク求人ベースの参考値)。ハローワーク求人は就職に結びつく比率が低いものの(前述の約0.9%)、職種間の需給の偏りを見る物差しとしては使えます。
上る先の会社を業態から見分ける話——分類は何を表しているのか、同じ看板でも商流の位置がどう違うのか——はSIerとは何かと商流の位置の確かめ方で整理しています。
一手2|職種を固定して、身を置く業界・領域を選び直す
「40代からの未経験職種チャレンジ」は編集部は勧めません。勧めるのは逆で、職種(業務系SE)を固定したまま、需要が伸びて供給が追いついていない領域に置き直すことです。
同じ基幹システムの経験でも、それを「二次請けの保守要員」として売るか、「レガシー刷新プロジェクトの業務知識持ち」「ユーザー企業の内製化要員」として売るかで、値札は変わります。実際、経験17年の業務知識(会計・生産管理・在庫管理など)は、下請け構造の外では希少資源です。伸びている領域かどうかの判定は、雰囲気ではなく求人倍率と賃金の実測で行ってください(前掲の組込み・IoT系4.26倍のような偏りが判断材料になります)。この「職種を固定して置き場所を選び直す」進め方を、実行の順番まで落とし込んだものが40代エンジニアの一手を手順に落とした記事です。
一手3|積み方を変える:値札が動くものだけを積む
40代の学習時間は有限です。だから「何でも積む」のではなく、値札が動く積み方に絞ることを勧めます。
- 積む価値が高い(値札の断層を越えるもの):要件定義・基本設計の実務経験、小規模でもリーダー・PM経験(578.5万→889万の断層はここに対応)、いま持つ業務知識の言語化(職務経歴書に書ける形にする)
- 慎重に判定するもの:資格・新技術の学習。それ自体は無駄ではありませんが、値札が動くかは求人要件に出てくるかで判定します。「とりあえずAI」のような空気だけの投資はしない——旬かどうかも求人の実数で確かめるのが編集部の流儀です
積む対象をどう選び、逆に何を積んでも値札が動かないのかは積む対象を需給で選ぶスキルアップの考え方で扱っています。
この3つの一手のうち、どれから手を付けるかを決める手順は先に着手する一手の選び方にまとめています。効き始めるまでの時間・自分の裁量で終わるか・外したときに戻れるかの3つで並べ替える形にしました。
測った値札の使い道は、転職だけではない
値札を測る=転職する、ではありません。測った値札の使い道は3つあり、どれを選んでも「測った意味」はあります。
- 転職に使う(値札を換える)——値札が現年収を明確に上回っているなら、年収に換えるか、時間・場所・心の平穏に換えるかを自分の軸で選べます。家族と住宅ローンがあるなら、在職中に活動する前提で急がず比較することを勧めます
- 社内交渉に使う——「市場ではこのレンジ」という実測値は、評価面談・単価交渉の最強の材料です。黙って待つ人から順に安く使われるのがこの業界です
- 「動かない」を選ぶ材料に使う——測った結果、現職の条件が値札に見合っているなら、堂々と留まればいい。不安の総量は「知らない」ことに比例します。測って留まるのと、測らず留まるのは別物です
唯一やめてほしいのは、測らないまま「40代だからもう無理だ」と結論を出すことです。限界があるのは年齢ではなく、値札を一度も測ってこなかったことのほうだ——というのが当サイトの立場です。
よくある質問
エンジニアの市場価値とは何ですか?
採用市場があなたの経験・スキルに提示する条件(年収・ポジション)の相場のことです。現在の年収(社内の値付け)とも自己評価とも別物で、スカウト・エージェント面談・求人票・公的統計で実測できます。詳しくは本文のステップ1をご覧ください。
エンジニアの市場価値はいくらですか?平均はありますか?
公的データでは、プログラマー・SEなど開発系職業の平均年収は578.5万円、基盤系SE・ITプロジェクトマネージャは889万円です(2026年時点のjob tag掲載値。令和7年賃金構造基本統計調査に基づく)。ただし平均はあくまで物差しで、個人の値札は経験工程・商流上の位置・業務知識で大きく変わります。
実務経験1〜3年と17年では市場価値はどう違いますか?
経験年数そのものより「どの工程を任されたか」で差が付く、が編集部の答えです。公的調査では下請け企業の担当工程は開発が56.6%、要件定義は5.5%に偏ります(公正取引委員会・2022年)。経験17年でも下流工程のみなら値札は伸びにくく、逆に3年でも設計・顧客折衝を経験していれば評価されます。年数を悲観する必要も、年数だけで安心する材料もありません。
エンジニアの市場価値を高める資格はありますか?
資格単体で値札が大きく動くことは期待しないでください。ITエンジニアに業務独占資格はなく(代表的な国家試験の情報処理技術者試験も業務独占・名称独占のいずれでもありません)、採用は実務経験を重視します。資格はITSSレベルの目安(応用情報=レベル3相当など)として学習の証明には使えるので、「その資格が応募したい求人の要件・歓迎条件に出てくるか」で投資判断することを勧めます。
市場価値の高いSEとはどういう人ですか?
「需要が多く、供給が少ないことができる人」です。具体的には、①要件定義・PMなど上流工程の実務経験がある、②特定業務領域(会計・生産管理など)の知識と開発経験を両方持つ、③実績を数字で語れる——の3点を編集部は重視します。年齢は要件ではありません。
年収400万円台はエンジニアとしてどのくらいのレベルですか?
job tagのスキルレベル別レンジ(2026年時点掲載値)では、400万円台はレベル1〜2帯(420万〜620万円)からレベル3帯(450万〜700万円)の下位に相当します。ただし本文で示したとおり、商流下層では実力より低い値付けが構造的に起こります。年収がレベル相応かは、レンジ表ではなくスカウト・面談での実測で確かめてください。
まとめ|今日やることは「測る」だけ
- 市場価値=市場が付ける値札。現在の年収でも自己評価でもなく、実測できるもの
- 測定器は4つ:スカウト(定点観測)・エージェント面談・求人票・公的統計。ハローワーク求人が就職に結びつく比率は約0.9%(全職業計約5.5%)と低く、値札は民間市場で提示される
- 相場の物差し:開発系578.5万円/上流系889万円。情報通信業(産業別)の賃金ピークは55〜59歳で、50代前半に横ばい〜微減を挟む。40代はまだ上り坂の途中
- 頭打ちの主因は商流構造(中間マージン+下流工程への偏り)。構造が原因なら、場所を変えれば値札は動く
- 一手は3つ:商流を上る/職種を固定して置き場所を選び直す/値札が動くものだけを積む
- 測った値札の使い道は、転職・社内交渉・「動かない」の3つ。どれを選んでもいい
転職を決める必要は、今日はありません。今日やることは、職務経歴を棚卸しして測定器に載せる——つまり測ることだけです。値札を上げた人から順に、年収でも時間でも心の平穏でも、選択肢が増えていきます。
訂正履歴
- 2026年9月1日|「開発系エンジニアの平均は578.5万円、上流系は889万円」の節:job tagで同一の平均値が掲載されている開発系の職業を「6職業」と書いていましたが、2026年9月1日に編集部が各職業ページを確認したところ9職業でした。職業数を9に改めました(平均年収・平均年齢の数値は変わっていません)。
参考・出典
- 厚生労働省 job tag(職業情報提供サイト)プログラマー・システムエンジニア(受託開発)・システムエンジニア(基盤システム)・プロジェクトマネージャ(IT)ほか各職業ページ(平均年収・ITSSレベル別年収・有効求人倍率): https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/313 ほか(平均年収・ITSSレベル別年収は2026年時点掲載値、有効求人倍率は令和7年度の掲載値〔2026年9月1日に編集部が確認。同サイトはこの項目を「ハローワーク求人統計データ」として掲載している〕)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月24日公表)——「(5)産業別にみた賃金」第5-1表「産業、年齢階級別賃金及び対前年増減率」(概況10ページ)=情報通信業の年齢階級別所定内給与/「(2)性別にみた賃金」第2表「性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差」(概況7ページ)=全産業計の年齢階級別所定内給与。数値はいずれも2025年6月分: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」参考統計表7-1(情報処理・通信技術者の有効求人・就職件数): https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001695527.pdf
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」図4-1・表6(年齢階級別転職入職率・転職入職者の賃金変動): https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf
- 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(2022年6月29日公表。多重下請構造・担当工程・中間マージンに関する記述): https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_sw_03.pdf

