市場価値・年収

ITSSとは?レベルが表さないものと年収レンジの出どころ

ITSSとはレベルの意味を読む。能力の尺度と、年収は別の話。
テックスカウト編集部

ITSS(ITスキル標準)を公開しているIPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、レベルが何を表さないかを本文に書いています。表しているのは、価値を創出するために必要なスキルの度合いだけです。サービスの価値の大小や、組織内での職責の高さを表したものではない、と原文にあります。

それでも、レベル別の年収レンジは実在します。厚生労働省の職業情報提供サイト job tag には、設計・構築の区分でレベル1〜2が420.0万円〜620.0万円という表が載っています(2026年9月2日に編集部が確認)。ただしこの金額は、2023年度に実施された委託調査の集計値です。

この記事では、その委託調査の資料まで開いて、設問の文言と集計の区分を確かめました。IPAが公開している枠組みの側も、目的とレベルの但し書きを原文で確認しています。扱うのは制度と数字の出どころで、レベルに対応する資格の一覧は扱いません。

ITSSとは、能力を体系化した「ものさし」として公開された指標です

ITSSとは、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標です。公開しているのはIPAです。公開ページの原文では、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするもの、と説明されています。そして公開している側は、この指標が何を表さないかも同じ枠組みの中で書いています。

編集部はこの指標を、年収の目標額を決める道具としては使いません。使うのは、あなたの職務がどの区分に置かれるかを見るところまでです。元になった調査が尋ねたのは「現在の職務に求められるITスキルレベル」で、個人の到達度ではないためです。

値札(市場価値)を測る手順の全体像は指標の読み方を自分の金額に切り替える工程にまとめています。ここでは、その物差しの1つとして使われているITSSの側だけを確かめます。

IPAが書いているのは、レベルが職責の高さを表すものではないということ

キャリアフレームワークのページには、レベルの読み方についての注意書きが置かれています。編集部が2026年9月2日に確認した範囲では、この一文を引いた解説は見当たりませんでした。原文はこうです。

本スキル標準で表現しているのは、あくまでも、プロフェッショナルとして価値を創出するために必要なスキルの度合いであり、それぞれの職種/専門分野におけるサービスの価値の大小や組織内における職責のレベルを表現しているものではないことに注意が必要です。

(IPA「6.ITスキル標準とは -キャリアフレームワーク」。2026年9月2日に編集部が原文で確認しました。)

ここで否定されているのは2つです。1つはサービスの価値の大小、もう1つは組織内における職責のレベルです。レベルが高いほど責任の重い立場である、という読み方を、枠組みを作った側が先に否定しています。

同じページには、レベルが空白になる場合の説明も置かれています。原文は次のとおりです。

職種/専門分野によっては、プロフェッショナル個人として価値を創出するにはいたらない下位レベルが空白となっているものがあり、また、価値を創出するために必要なスキルの上限以上の上位レベルが空白となっているものがあります。

(前掲・IPA「6.ITスキル標準とは -キャリアフレームワーク」。同日に確認しました。)

7段すべてが、どの専門分野にも用意されているわけではありません。下が空いている分野もあり、上が空いている分野もある、というのが原文の説明です。レベルの数字は、共通の階段の高さを示す目盛りとしては読めません。

そのうえで、レベルを上げれば年収が上がる、と本記事は書きません。上げた人の年収が実際に動いたかどうかを追跡した資料を、編集部は確認できていないためです。確認できたのは、レベル別に集計された賃金の分布までです。

ITSSのレベルが表すものと表さないものを分けた模式図

枠組みは11職種・35の専門分野・7段階でできています

同じページは、この指標の骨格を3つの数で説明しています。職種が11、各職種ごとに全部で35の専門分野、そして各専門分野に7段階のレベルです。7段階のレベルは、英国のスキル標準である「SFIA(Skills Framework for the Information Age)」などを参考に定められました、と原文にあります。

骨格の要素数原文での説明
職種11コンサルタント、プロジェクトマネジメント、ITスペシャリストなどが例として挙げられている
専門分野35「各職種ごとに全部で35の専門分野を設けています」
レベル7段階英国のスキル標準「SFIA」などを参考に定められた

(出典:IPA「6.ITスキル標準とは -キャリアフレームワーク」。2026年9月2日に編集部が原文で確認)

この3つの数が意味するのは、レベルの数字が単独では位置を示さないということです。同じレベル3でも、どの職種のどの専門分野のレベル3かで中身が変わります。数字だけを職務経歴書に書いても、何ができるのかは伝わりません。

段の定義そのもの——どの段で何ができるとされているか——は本記事では扱いません。年数との対応まで含めた読み方は段の定義を年数と突き合わせた記事にあります。

掲載中の版はV3 2011で、公開から改訂までの記録が残っています

ダウンロードのページには、版の名前と3つの日付が並んでいます。版はITスキル標準V3 2011、公開日は2012年3月26日、改訂日は2018年8月27日、ページの最終更新日は2025年7月1日です(2026年9月2日に編集部が確認)。枠組みの本体は、2011年の版のまま公開されています。

2018年の改訂には、注記が1つ添えられています。ITパスポート試験が、ビッグデータやIoTなど新技術に関連する出題を強化する、というのがその背景です。それにともない、ITスキル標準V3のレベル1の評価にiパスが対応するとの関連を取りやめる、と書かれています(2018年8月27日掲載)。試験とレベルの対応は、公開している側で動いた記録が残っている領域です。

IPAは現在、スキル標準のページでITSS+・ITSS・UISSを「IT人材の育成や採用の際に参考となるスキル標準」と位置づけています。同じページで、デジタルスキル標準(DSS)は「DX推進のための人材確保・育成の指針」と説明されています。ITSSが取り下げられたという記述には、編集部が2026年9月2日に確認した範囲では行き当たりませんでした。

job tagのレベル別の帯は、2023年度の委託調査から来ています

job tagの表の下には、出どころを1行で示した注記が置かれています。「※厚生労働省が2023年度に実施した委託調査結果に基づき掲載」という一行です。金額の範囲についても「※金額は第一四分位から第三四分位の範囲を表しています。」と添えられています。

この注記の横には「結果の概要はこちら」というリンクがあります。開くと、調査の設計を説明した資料に着きます。

資料の表題は「『IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査』における個人アンケート調査について」です。厚生労働省が令和5年度委託研究事業として行った調査で、IT・デジタル関連職種の従事者を対象にしています。調査期間は2023年9月15日から19日まで、調査対象者数は2,000人でした。回答は、モニター会社が保有する名簿を基に、WEB上の回答フォームで集められています。

資料には、スキルレベルをどの設問で尋ねたかも書かれています。並んでいる項目は「現在の職務に求められるITスキルレベル」でした。尋ねられているのは、回答者個人の到達度ではなく、いま就いている職務の側に付いたレベルです。

ここから、この帯の使い道が決まります。自分のレベルを判定した結果を金額に換える表としては使えません。あなたの職務がどの区分に当たるかを選ぶところまでなら、この帯は使えます。それ以上は、この調査が測っていない範囲だと編集部は考えます。

7段が4つの行に畳まれています

原調査の資料は、集計をどう畳んだかを本文で説明しています。「『レベル1~2』、『レベル3』、『レベル4』、『レベル5以上』の4区分で集計を行った」と書かれています。ITSSの側は7段ですが、金額が並ぶのは4つの行です。

レベル1と2は1つの行にまとめられ、レベル5・6・7は「5以上」の1行になっています。段の刻みと金額の刻みは、最初から一致していません。

編集部は2026年9月2日に、job tagの職業ページを5つ開いて区分と金額を突き合わせました。掲載されていた区分は、企画立案・プロジェクト管理、設計・構築、運用・保守、プロジェクトマネージャ、ソフトウェア開発スペシャリストの5つです。同じ区分は2つ以上のページで照合しています。

区分(job tagの表記)レベル1〜2レベル3レベル4レベル5以上
企画立案・プロジェクト管理掲載なし600.0万円〜900.0万円650.0万円〜950.0万円700.0万円〜1100.0万円
設計・構築420.0万円〜620.0万円450.0万円〜700.0万円500.0万円〜780.0万円600.0万円〜950.0万円
運用・保守420.0万円〜700.0万円450.0万円〜700.0万円510.0万円〜800.0万円667.5万円〜1086.0万円
プロジェクトマネージャ掲載なし600.0万円〜925.0万円675.0万円〜950.0万円700.0万円〜1100.0万円
ソフトウェア開発スペシャリスト435.0万円〜600.0万円450.0万円〜695.0万円500.0万円〜750.0万円550.0万円〜866.0万円

(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)の各職業ページ「スキルレベル別給与データ(年収)」。2026年9月2日に編集部が5ページを開いて確認。同サイトはこの表に「※金額は第一四分位から第三四分位の範囲を表しています。」「※厚生労働省が2023年度に実施した委託調査結果に基づき掲載」と注記している)

企画立案・プロジェクト管理とプロジェクトマネージャには、レベル1〜2の行がありません。下の段が用意されていない区分がある、という点は、IPAの原文にあった「空白の段」の説明とも重なります。

この表を列で確かめると、下端は5区分すべてで段が上がるほど上がっています。一方で上端は、編集部が開いた5区分の範囲では、運用・保守だけがレベル1〜2とレベル3で同じ700.0万円で並びます。段が1つ上がっても第三四分位が動かない箇所がある、ということです。

ITSSの7段が集計上4つの行に畳まれていることを示す模式図

ここからは別の系列の話になります。job tagの同じ職業ページには、在職者の平均年収も載っています。プログラマーなどの開発系が578.5万円(平均年齢37.1歳)、プロジェクトマネージャ(IT)などの区分が889万円(38.3歳)です。運用・管理(IT)などの区分は609.8万円(42.2歳)でした(いずれも2026年9月2日に編集部が開いた掲載値)。

この平均年収の出どころは令和7年賃金構造基本統計調査で、レベル別の帯の出どころは2023年度の委託調査です。調査そのものが違い、掲載元は集計方法を明示していません。したがって編集部は、両者を1本の梯子としてつなぎませんし、引き算もしません。

ITSSレベル別の年収レンジと在職者の平均年収を別ブロックに分けて示した図(2つは別系列のため差は評価しない)

帯の中のどこに自分の額が入るかという当てはめは、本記事では扱いません。年齢階級の実額と合わせた読み方は帯のどこに自分の額が入るかを当てはめた記事にあります。

在職者の平均が職種の区分や商流でどう割れるのかも、別の記事の担当です。金額そのものの決まり方は在職者の平均がどこで割れるかを分けた解説にまとめています。

原典で確認できなかった4つの項目

開いた資料の範囲では、次の4点は確認できませんでした。編集部が2026年9月2日に開いたのは、IPAの公開ページ3つ、job tagの職業ページ5つ、job tagがリンクしている委託調査の資料1つです。

  1. ITSSが策定された年と、策定した主体。IPAの公開ページには目的の記述はありますが、いつ誰が定めたのかを示す記述は見当たりませんでした
  2. レベル別の集計に付された誤差の注記。資料には「一部の役職では、サンプルが小さく誤差が大きいことから、上位の役職で賃金が上昇していない箇所があることに留意が必要である」という一文があります。ただしこれは役職別の集計に付されたもので、ITSSレベル別の集計に付されたものではありません
  3. 有効回答数。資料の記述は「調査対象者数:2,000人」までで、有効回答数という語での記載は確認できませんでした
  4. レベル7に到達した人の数。母数を公表した資料を、編集部は確認できていません

開いたのは公開ページと1つの資料で、作業したのはWebマーケティングを担当する運営メンバーです。ITSSのレベル判定を社内の制度として受けたことはありません。

レベルに対応する資格の一覧と、どの試験を先に受けるかという計画は本記事の担当ではありません。何を積めば段が動くのかという判定は段を上げる材料をどこから取るかの整理にあります。

よくある質問

ITSSのスキルレベルは?

7段階です。IPAのキャリアフレームワークのページに、各専門分野について7段階のレベルを規定していると書かれています。ただし職種や専門分野によっては、下位や上位のレベルが空白になっているものがあるとも説明されています(2026年9月2日に編集部が原文で確認)。

ITSSのレベル表は?

レベルの一覧は、IPAが公開しているITスキル標準V3 2011の資料に載っています。当サイトはその表を転載していません。段の定義を確かめたい場合は、公開元の資料を直接開いてください。

ITSSレベル4の年収は?

job tagが載せている5つの区分には、いずれもレベル4の帯があります。設計・構築が500.0万円〜780.0万円、運用・保守が510.0万円〜800.0万円、ソフトウェア開発スペシャリストが500.0万円〜750.0万円です。企画立案・プロジェクト管理は650.0万円〜950.0万円、プロジェクトマネージャは675.0万円〜950.0万円でした(いずれも2026年9月2日に編集部が開いた掲載値)。この金額は2023年度の委託調査の集計で、尋ねられていたのは現在の職務に求められるレベルです。

ITSSレベル4に相当する資格は?

当サイトはレベルと資格の対応表を扱っていません。IPAのITスキル標準V3 2011のダウンロードページには、2018年8月27日掲載の注記として、レベル1の評価とITパスポート試験の関連を取りやめる旨が書かれています。対応関係は公開している側で動くことがあるため、確かめるときはIPAの当該年度のページを直接開いてください。

まとめ——ITSSは能力の物差しで、年収の段位ではありません

  • ITSSとは、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標。公開しているのはIPAで、教育・訓練に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするもの、と説明されている
  • レベルが表さないものが原文に書かれている。サービスの価値の大小と、組織内における職責のレベルは表現していない、と明記されている
  • 骨格は11職種・35の専門分野・7段階。7段階は英国のスキル標準「SFIA」などを参考に定められた。職種や専門分野によっては空白の段がある
  • 掲載中の版はITスキル標準V3 2011(公開日2012年3月26日・改訂日2018年8月27日・ページの最終更新日2025年7月1日。いずれも2026年9月2日に確認)
  • job tagのレベル別年収レンジは、2023年度の委託調査の集計値。設問は「現在の職務に求められるITスキルレベル」で、集計は「レベル1〜2/レベル3/レベル4/レベル5以上」の4区分
  • 7段が4つの行に畳まれている。掲載区分は5つで、企画立案・プロジェクト管理とプロジェクトマネージャにはレベル1〜2の行がない
  • 在職者の平均年収は別系列(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)。レベル別の帯とは調査が違うため、1本の梯子としてつながない

はじめに決めるのは、あなたの職務が表のどの行に載るかの1点です。区分が決まれば、どの帯を見ればよいかも決まります。区分の名前が1つ決まると、その帯を自分に当てていいかどうかも同時に決まります。

※本記事の統計・制度に関する記述は、記載の一次資料に基づく一般的な情報です。個別の給与・待遇の判断は、勤務先の規程や求人条件、必要に応じて公的機関・専門家への確認を併せて行ってください。


参考・出典

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