エンジニア転職は何年目か|40代が年数で決めてはいけない理由

年数の目盛りではなく積み上がった中身を測ろうとするイメージ図
テックスカウト編集部

エンジニア17年目。職務経歴書の「経験年数」の欄を埋めながら、この数字が転職で何かの役に立つのか分からなくなっていないでしょうか。先に結論を書きます。「何年目がベストか」に、年数の正解はありません。

理由は単純です。賃金構造基本統計調査が定義しているのは「勤続年数」、つまりその企業に雇い入れられてからの年数です。転職すれば0年から数え直しになる数字で、あなたがエンジニアとして積んできた通算の経験年数とは数えているものが違います。職種としての通算経験年数を集計した公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たりません。

この記事では、年数という物差しが判断材料になるのかを、公的データと条文で検証します。在籍年数は転職の判断材料にはなりません。ただし年1回の棚卸しを始める合図としてなら使える、というのが編集部の立場です。

「エンジニア転職は何年目がベストか」に、年数の正解はない

エンジニア転職の「何年目」に、市場が共有している正解の年数はありません。理由は2つあります。1つは、年数という言葉が指すものが2種類あって混ざっていること。もう1つは、採用の側が年数を要件として持つ義務がないことです。

この2つを順に見ていきます。どちらも、編集部が2026年8月25日に確認した検索上位12件では、扱っているページが見当たらなかった論点です。

「経験年数」と「勤続年数」は、数えているものが違う

あなたが「17年目」と言うときの年数は経験年数で、統計が持っているのは勤続年数です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、勤続年数を「労働者がその企業に雇い入れられてから調査対象期日までに勤続した年数の平均をいう」と定義しています(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」「主な用語の定義」。2026年8月25日に編集部が原文で確認)。同じ調査の用語定義に、職種としての通算の経験年数を指す項目は置かれていません。

違いは実務でそのまま効きます。24歳で入社し、30歳で同業へ1回転職した41歳のエンジニアなら、経験年数は17年、いまの会社での勤続年数は11年です。転職すれば勤続年数は翌日に0年へ戻りますが、経験年数は減りません。

エンジニアとしての通算経験年数を集計した公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たりません。確認したのは賃金構造基本統計調査の概況と、同調査の用語定義です(2026年8月時点)。この範囲の外に該当する集計がある可能性は残ります。

つまり「何年目が多い」「何年目がベスト」と語られるとき、その年数がどちらを指しているのかは、書いた側も読む側も揃っていません。目盛りが2種類あるまま議論しているようなものです。

求人票に「必要な経験年数」を書く義務はない

募集時に明示しなければならない事項の列挙に、必要な経験年数は入っていません。労働条件等の明示義務は職業安定法5条の3第1項が定め、明示すべき事項の中身は同条4項の委任を受けた同法施行規則4条の2第3項が列挙しています。列挙されているのは次の項目です(各号は条文の要旨。2026年8月25日にe-Gov法令検索で編集部が原文を確認)。

  • 第1号:労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
  • 第2号:労働契約の期間に関する事項/第2号の2:試みの使用期間に関する事項/第2号の3:有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • 第3号:就業の場所に関する事項
  • 第4号:始業及び終業の時刻等に関する事項
  • 第5号:賃金の額に関する事項
  • 第6号:各種保険の適用に関する事項
  • 第7号:労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称
  • 第8号:派遣労働者として雇用しようとする旨
  • 第9号:受動喫煙防止措置に関する事項

経験年数は、この列挙のどこにもありません。求人票に「実務経験3年以上」と書かれていても、それは法律が書かせている項目ではなく、企業が任意に置いた条件です。任意の条件である以上、基準は企業ごとに違い、外から共通の正解を割り出せません。

なお、制度の説明はあくまで一般的な情報です。個別の求人で条件の意味が判断できない場合は、応募先の企業か、ハローワークなどの公的な窓口に確認してください。

勤続年数と賃金の関係は、途中で頭打ちになる

年数と賃金の関係を公的データで見ると、上がり続ける形にはなっていません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、勤続年数階級別の所定内給与額を公表しています。数値は次のとおりです。

勤続年数 男女計 男性 女性
0年 27万4,500円 29万4,000円 25万2,000円
1〜2年 28万5,300円 30万5,800円 25万9,600円
3〜4年 29万7,000円 32万200円 26万6,800円
5〜9年 31万2,500円 33万8,300円 27万6,600円
10〜14年 33万3,600円 36万2,800円 28万5,800円
15〜19年 37万800円 40万5,100円 30万5,400円
20〜24年 40万400円 43万4,700円 32万7,400円
25〜29年 43万3,600円 46万3,900円(男性で最も高い階級) 34万6,200円
30年以上 44万4,200円(男女計で最も高い階級) 46万1,800円 37万5,300円(女性で最も高い階級)

出典:前掲・令和7年賃金構造基本統計調査の概況「(7)勤続年数階級別にみた賃金」第7表「勤続年数階級、性、企業規模別賃金及び対前年増減率」〔概況14ページ〕(一般労働者・企業規模計、所定内給与額。数値は2025年6月分)。上表は産業計(全産業)の数値であり、情報通信業に限定した集計ではありません。

見てほしいのは男性の列です。上表の9つの勤続年数階級のなかで最も高いのは25〜29年の46万3,900円で、30年以上は46万1,800円とこれを下回ります。同じ会社に居続けた年数が最長の階級が、賃金でも最高になるわけではありません。

男女計では30年以上の44万4,200円、女性では30年以上の37万5,300円が最も高い階級です。性別で峰の位置が違うため、「勤続年数が長いほど賃金が高い」と1本の線に要約すると、原データの形が消えます。

勤続年数階級別の所定内給与額(男性は25〜29年が最も高く30年以上は下回る)

この表の読み方には、もう1つ注意があります。これは在職者の断面であって、同じ人が1社に居続けたときの賃金の推移ではありません。勤続の長い人が残っている会社の性質も混ざった数字だと編集部はみていますので、「長くいれば上がる」という因果には読み替えないでください。

年齢階級で切った賃金の実額は、本記事では扱いません。40代の年収がいくらで、自分がどの帯にいるのかは年数ではなく金額の側を扱った記事にまとめました。年数の話と金額の話を1つの記事に混ぜると、集計の異なる数字を1本の梯子として読むことになるためです。

「3年目がベスト」は、どこから来たのか

「3年目」の出どころは公的な集計ではなく、慣用句と、この種の記事が想定している読者層だと編集部はみています。編集部が確認した範囲では、経験年数別の階段を裏づける公的な集計は見当たりませんでした。この検索語で上位に並ぶ12件のうち10件は、「1年目/2年目/3年目/4年目以降」という年数別の構成を採っています(2026年8月25日時点)。ただし区切りの根拠として示されているのは、事業者の自社調査か、担当者個人の経験談です。

見立ての中身は2つに分かれます。1つは「石の上にも三年」という慣用句が、採用の文脈へそのまま持ち込まれていること。もう1つは、この種の解説記事の読者に若手が多く、書き手の側も1〜3年目に合わせて構成を組んでいることです。

当サイトは「石の上にも三年」を支持しません。三年で何が積み上がるかを言えないなら、それは我慢ではなく放置です。改善の見込みがない環境で年数を数え続けることに、編集部は価値を見ていません。

そして40代の読者にとって、この階段はそもそも上端が用意されていません。12件のうち11件は3年目か4年目以降で構成を打ち切っており、40代に固有の見出しを置いていたのは1件だけでした。17年目の読者に対して、年数別の階段は答えを持っていません。

40代の「17年目」は、年数の階段のどこにも載っていない

40代で問題になるのは年数の短さではなく、年数の中身が外から見えないことです。17年の経験と、同じ1年を17回繰り返した17年は、経歴書の年数欄では同じ「17年」としか書けません。差が出るのは年数ではなく、その17年のどこかで担当した工程が変わったかどうかです。

商流の下層では、年数を積んでも担当する工程が変わりにくい構造があります。この構造を担当工程の実数まで分解したのは年齢と商流から見た40代の現在地の全体像です。本記事は年数という物差しの検証に絞るため、工程の分布そのものには踏み込みません。

積んだ年数が応募の場面でどう扱われるかは、また別の話になります。求人の要件欄・書類選考・年収提示・応募の母集団の4つで開いていく差は、市場の側で何が起きているかの分解にまとめました。

年齢の話とも区別しておきます。「35歳で終わり」は年齢についての通説で、「3年目がベスト」は年数についての通説です。この2つは別の物差しなので、片方を否定しても、もう片方は自動的には片づきません。年齢のほうは35歳という区切りを統計で確かめた解説で扱っています。

年数の代わりに見るのは、担っている役割の段

IT技術者の水準を段で刻んだ指標はありますが、その刻みは年数ではありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開しているITスキル標準(ITSS)がそれにあたります。IPAは、専門分野ごとに「IT技術者個人の能力や実績に基づいて7段階のレベルを規定しています」と説明しています(IPA「ITスキル標準とは -キャリアフレームワーク」。2026年8月25日に編集部が原文で確認)。

レベル定義を実際に見ると、段の中身は担う役割の言葉で書かれています。次の7段が原文のままの記述です。

  • レベル1:最も基礎的なITエンジニア
  • レベル2:指導者の指導下で業務を遂行
  • レベル3:要求された作業を独力で実施
  • レベル4:スキル習熟度および認知度で評価。自らのスキルを活用して課題解決・発見
  • レベル5:プロフェッショナルとして企業内で確立
  • レベル6:プロフェッショナルとして企業内外で確立
  • レベル7:プロフェッショナルとして、世界で通用するプレイヤー

出典:独立行政法人情報処理推進機構 IT人材育成本部 ITスキル標準センター「ITスキル標準 はやわかり ― 人材育成への活用 ― ITスキル標準V3 2011 対応版」(2012年7月2日)表3.2.3「各レベルの定義」。IPAは独立行政法人であり、ITSSは統計法上の公的統計ではありません。

レベル2からレベル3への段は、「指導下で遂行」から「独力で実施」への変化です。レベル3からレベル4への段は、与えられた作業をこなす側から、課題を自分で見つけて解決する側への変化です。どの段にも、何年かかるかは書かれていません。

年数の階段とITSSのレベル定義が対応していないことを示す模式図

この指標が実務で意味を持つのは、段の中身が動詞で書かれているからだと編集部は考えます。年数は「どれだけ経ったか」しか表せませんが、動詞は「何ができるようになったか」を表せます。職務経歴書に書けるのは、後者のほうです。

レベルごとの年収の目安を示した資料もありますが、本記事では扱いません。段と金額を同じ話として並べると、集計の異なる数字を1本の梯子として読むことになるためです。金額の側は、前掲の年齢階級別の年収を扱った記事で確認してください。

在籍年数の正しい使い方は、棚卸しの合図だけ

編集部の結論を書きます。在籍年数は転職するかどうかの判断材料にはなりませんが、年に1回の棚卸しを始める合図としてなら使えます。年数そのものに情報はなくても、「また1年経った」という事実は、点検のきっかけにはなるからです。

合図が鳴ったら、次の3つを確認してください。いずれも職務経歴書を開けば、その場で判定できる項目です。

  1. この1年で、職務経歴書に増やせる行があったか——増えていないなら、年数だけが1つ増えた年です
  2. 担当した工程が変わったか——詳細設計と製造だけを繰り返しているなら、来年も同じ確認結果になります
  3. 社外の言葉で説明できるか——常駐先の固有名詞と社内の呼び方でしか説明できない実績は、求人票の要件と突き合わせられません

3つとも「いいえ」なら、年数は増えても値札(市場価値)は動いていません。ここで必要なのは転職の決断ではなく、外からの評価を1つ受け取ってみることです。年数を数えるより、実際の求人と自分の経歴を1回突き合わせるほうが、判断材料としてはるかに具体的になります。

編集部の運営メンバーにも、年数ではなく中身が効いた経験があります(職種はWebマーケティング領域で、エンジニアの実務経験ではありません)。社会人1〜2年目という「浅い」時期に、当時まだ専門家の少なかったSEO(検索エンジン最適化)の実務へ深く関わったことが、その後20年近くの土台になりました。効いたのは在籍が長かったことではなく、その年に何へ時間を使ったかのほうでした。

積む対象をどう選ぶかは、本記事の範囲を越えます。判定の手順は年数の中身を何で埋めるかの判定にまとめました。実績を書類の行に変える書き方は積み上がりを書類の行に変える書き方で扱っています。

軸別の結論——編集部はこう考える

「人それぞれ」では終わらせません。あなたが何を最重要視するかで、いま年数をどう扱うべきかは変わります。

  • 年収を最優先するなら——年数を待つ意味はありません。賃金の峰は勤続25〜29年(男性・産業計)にあり、しかもそれは在職者の断面です。担当工程と商流の位置を変える移動のほうが、期待値は高いと編集部は考えます
  • 時間・場所を最優先するなら——年数より、いまの職場で条件を変えられる余地を先に確認してください。在籍が長いことは社内の交渉では材料になりますが、社外では材料になりません
  • 心の平穏を最優先するなら——年数を数えるのをやめてください。「まだ3年経っていない」も「もう17年も経った」も判断材料にはならず、焦りだけを増やします
  • 現職に大きな不満がないなら——動かない判断も合理的です。ただし年に1回の棚卸しだけは続けてください

登録も応募も、急ぐ必要はありません。当サイトは読者が転職サービスに登録すると収益を得る立場ですが、急かされた判断はあなたの軸を歪めるだけです。測るだけ測って動かない読者も、編集部にとっては成功例です。年数の点検を打ち手へ変える段取りは年数の点検で終わらせず打ち手に進む手順にあります。

よくある質問

エンジニアの転職は何年目がベストですか?

ベストの年数はありません。年数を根拠にできる公的な集計は、編集部が確認した範囲では見当たらないためです。判断に使えるのは、直近1年で職務経歴書の行が増えたか、担当した工程が変わったか、社外の言葉で説明できるかの3点です。

エンジニアは何年目から転職できますか?

何年目から応募できるという下限は、編集部が確認した範囲では、法令にも公的統計にも見当たりません。募集時に明示すべき事項を列挙した職業安定法施行規則4条の2第3項にも、必要な経験年数の項目はないためです。求人票の「実務経験○年以上」は企業が任意に置いた条件なので、内容は応募先へ直接確認してください。

エンジニアは何年目で転職を考え始めますか?

考え始める年数を集計した公的統計は、編集部が確認した範囲では見当たりません。上位の解説記事は事業者の自社調査を引いていますが、一次情報ではないため本記事では採りませんでした。編集部は、年数ではなく「この1年で増えた行があるか」を年1回確認する形を勧めます。

システムエンジニアは何年目で転職するのがベストですか?

職種をシステムエンジニアに絞っても、答えは変わりません。ITスキル標準のレベル定義は「指導者の指導下で業務を遂行」「要求された作業を独力で実施」のように担う役割で刻まれており、年数では刻まれていないためです(前掲・IPA)。システムエンジニアとしての17年を、設計や要件定義にどこまで関わったかで説明できるかが分かれ目になります。

ネットワークエンジニアは何年目から転職できますか?

こちらも、下限の年数を定めたものは見当たりません。ネットワーク領域でも、求人票が示すのは業務の内容・就業の場所・賃金の額といった法定の明示事項で、経験年数はその列挙に含まれていないためです。構築と運用のどちらをどれだけ担ったかを書けるなら、年数の多寡より先にそこが読まれます。

まとめ:年数は数えるものではなく、点検の合図

  • 物差しが2つある——読者が言う経験年数と、統計が数える勤続年数(その企業に雇い入れられてからの年数)は別物
  • 年数と賃金は上がり続けない——勤続年数階級別の所定内給与額は、男性で25〜29年の46万3,900円が最も高く、30年以上はこれを下回る(産業計・全産業)
  • 年数は法定の要件ではない——募集時に明示すべき事項の列挙に、必要な経験年数は含まれていない
  • 段は動詞で刻まれている——ITSSのレベル定義は「独力で実施」「課題解決・発見」のように役割で書かれ、年数を含まない
  • 使い方は1つだけ——年に1回、増えた行・変わった工程・社外の言葉の3点を点検する合図として使う

17年目という数字は、それ自体では何も証明しません。証明するのは、その17年のどこかで担当工程が変わった記録のほうです。先に自分の値札を測ってから、動くか動かないかを決めるのが編集部のおすすめです。


参考・出典


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