SESの40代がクビになる仕組み|契約終了・待機・解雇の境界

SESの「クビ」を契約終了・待機・解雇の3階層に分けて示した図解
テックスカウト編集部

SESの40代がクビになる仕組み|契約終了・待機・解雇の境界

「40代のSESは切られる」——常駐先で自分だけ更新の話が来ないとき、営業から「次の現場を探します」と言われたとき、その言葉が頭をよぎるはずです。先に結論を書きます。SESで「クビ」と呼ばれる出来事は、①常駐先の契約終了、②待機、③自社からの解雇の3階層に分かれ、法律関係がまったく違います

①は準委任契約の解除(民法651条1項・656条)で常駐先はいつでも解除でき、③は労働契約法16条で「客観的に合理的な理由」がなければ無効です。実数のほうも見ておくと、2024年に転職した男性のうち前職を辞めた理由が「会社都合」だった割合は40〜44歳で7.6%でした(厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」・全産業)。25〜29歳の1.5%の約5倍に増えますが、9割超は依然として会社都合ではありません。

この記事では、3階層の境界と、40代で切られやすくなる構造上の理由、そして「40代はSESしかない」が求人データと合っているのかを扱います。読み終えたときに、いま自分に起きていることがどの階層の話なのかを判断できる状態を目指します。

「SESでクビ」の正体は3階層に分かれる

最初に全体像です。SESにおける「クビ」は単一の出来事ではなく、常駐先との契約が終わる段階、社内で待機する段階、雇用契約そのものが終わる段階の3階層に分かれます。この3つを区別しないまま不安を抱えているために、「明日から来なくていい」と言われた瞬間に職を失ったと感じてしまいます。実際には、①が起きても②と③は自動的には起きません。

段階 何が終わるのか 適用される主なルール あなたの雇用
①常駐先の契約終了(退場・現場離任) 自社と常駐先の準委任契約(または請負契約) 民法651条1項・656条(委任・準委任はいつでも解除できる) 継続する
②待機(次の現場が決まらない期間) 何も終わっていない。稼働が止まっている状態 労働基準法26条(会社都合の休業は平均賃金の60%以上)、民法536条2項 継続する
③自社からの解雇 自社との労働契約 労働契約法16条・17条1項、労働基準法20条、整理解雇の4要素 終わる
準委任契約と労働契約の2層構造で、契約終了と解雇の違いを示した図解

SESの契約構造そのものはSESの仕組みと商流をまとめた解説で扱っています。ここでは「切られる」側の視点に絞って、3階層を順に見ていきます。

段階①:常駐先の契約終了は「解雇」ではない

常駐先からの契約終了は、法的には解雇ではなく契約の解除です。公正取引委員会の実態調査も、SESを「技術者を派遣しシステム開発・インフラ環境構築等を行うサービスを提供する契約。準委任契約、常駐型が多い」と定義しています(「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」2022年6月29日)。あなたと常駐先の間に雇用関係はありません。契約を結んでいるのは、常駐先とあなたの会社です。

用語を1つ整理しておきます。この定義文の「派遣」は技術者を送り出すという一般的な意味で使われた語で、労働者派遣法上の労働者派遣を指すものではありません。労働者派遣では派遣先が労働者に直接指揮命令できますが、SESの前提である準委任・請負では発注者(常駐先)に指揮命令の権限はなく、指揮命令は所属会社が行います。この指揮命令の所在が、労働者派遣と準委任を分ける境界です。

そして準委任契約の解除は、条文上きわめて自由です。

  • 民法651条1項:「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」
  • 民法656条:「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」(=準委任にも651条が準用される)

つまり常駐先は、あなたの技術力に問題がなくても、いつでも契約を解除できます。ここが「クビ」という言葉が誤解を生む最大の点です。プロジェクトの縮小や予算の締め直しで契約が終わることは、あなたへの評価とは無関係に起こります。

ただし解除が完全に無条件というわけではありません。民法651条2項は、相手方に不利な時期に解除した場合などには損害を賠償しなければならないと定めています(やむを得ない事由があるときを除く)。実務上、この清算は会社と常駐先の間の交渉であり、あなたが直接関わる話ではありません。あなたが確認すべきは「契約はいつまで有効なのか」「終了は誰の判断なのか」の2点だけです。

段階②:待機中の賃金は「平均賃金の6割以上」が最低ライン

待機期間に入っても、あなたの雇用契約は続いており、賃金の支払義務も消えません。以下は月給制の正社員を前提にした説明です(有期契約・時給制の場合や、不可抗力による休業では結論が変わりえます)。ここを曖昧にしたまま「待機中は給料が減るらしい」と書いている解説が多いのですが、条文上のラインは明確です。

会社の都合で労働者を休ませる場合、労働基準法26条が適用されます。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(労働基準法26条)

厚生労働省の労働局も「会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません」と説明しています(栃木労働局「休業手当(第26条)」2026年8月時点)。

ここで押さえるべきは3点です。

  1. 6割は最低ラインであって、標準ではない。月給制の正社員であれば、賃金は労働契約・就業規則で定めた額が支払われるのが原則で、26条はそれを下回れない最低基準を定めたものです
  2. 民法536条2項は「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」と定めており、休業の原因が会社側にある場合の賃金請求の根拠になります
  3. 会社から自宅待機を命じられ、賃金が一方的にカットされている場合は、労働基準監督署に相談する対象です。制度の当てはめは個別の事情で変わるため、実際に減額されているなら労働基準監督署または弁護士・社会保険労務士に確認してください

なお、SESの待機期間の平均や最長を示す公的統計は存在しません。「待機は何か月まで大丈夫か」という問いに数字で答えている記事を見かけても、出典を確認してください。編集部が職業安定業務統計・雇用動向調査・労働者派遣事業報告書を確認した限り、該当する集計項目はありませんでした(2026年8月時点)。

段階③:自社からの解雇には、越えるべきハードルがある

待機が長引いた末の解雇は、労働契約法16条の審査を受けます

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法16条)

「案件が決まらないから」を理由とする解雇は、経営上の理由による整理解雇に近い性質を持ちます。厚生労働省は「労働契約の終了に関するルール」で、整理解雇の適否を判断する4つの要素を次のように整理しています(判例法理を行政が整理したもので、条文そのものではありません)。

  1. 人員削減の必要性:人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
  2. 解雇回避の努力:配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
  3. 人選の合理性:整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
  4. 解雇手続の妥当性:労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

あわせて手続面のルールもあります。解雇するには少なくとも30日前の予告、または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です(労働基準法20条1項)。有期雇用契約の途中で解雇する場合は、さらに厳しく「やむを得ない事由がある場合でなければ」解雇できません(労働契約法17条1項)。

編集部の立場をはっきり書きます。「案件が決まらないので明日から来なくていい」は、それ自体では解雇の合理的理由として説明が足りていません。営業が現場を取れなかったことは、まず会社側の解雇回避努力(上記2)が問われる事柄です。

退職届にサインを求められた場面で、その場で応じる必要はありません。ここは法的判断が絡むため、迷ったら労働基準監督署の総合労働相談コーナーに事実を持ち込んでください。

「40代は切られる」は本当か——会社都合離職の実数

結論から言えば、40代で会社都合の離職は確かに増えます。ただし頻度としては依然として稀です。この両面を数字で同時に示している解説は、編集部が確認した限り見当たりませんでした。対象は「ses 40代 クビ」で取得できた上位20件です(2026年8月時点。20位までのうち2件は本文を取得できませんでした)。

厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年8月26日公表・2024年の状況)の表5は、転職して入職した人が前職を辞めた理由の構成比を年齢階級別に示しています。男性の「会社都合」の割合は次のとおりです。

年齢階級(男性) 前職を辞めた理由が「会社都合」の割合
25〜29歳 1.5%
30〜34歳 2.7%
35〜39歳 4.5%
40〜44歳 7.6%
45〜49歳 6.6%
50〜54歳 8.6%
55〜59歳 10.9%
(男性計) 5.2%

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表5(2024年・全産業。転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてみた構成比)

前職を辞めた理由が会社都合だった割合の年齢階級別グラフ(男性・2024年)

40〜44歳の7.6%は、25〜29歳の1.5%の約5倍です。「40代になると切られる」という現場の感覚は、この数字と整合します。同じ調査の表5では40〜44歳男性の「定年・契約期間の満了」はわずか1.3%なので、40代前半の非自発的な離職は定年ではなく会社都合として現れているということです。

一方で、頻度の水準も見てください。同じ調査の図6によると、2024年の**「事業所側の理由」(経営上の都合・出向・出向元への復帰の合計)による離職率は0.8%**(男性1.0%・女性0.6%)です。常用労働者100人のうち年に1人程度という水準で、「個人的理由」による離職率10.7%(男性8.8%)とは桁が違います。

2つの数字は矛盾していません。会社都合で辞めた人だけを見れば40代の比率は上がるが、労働者全体で見れば会社都合で職を失う人は少数派という関係です。ここで読み方の注意を4つ添えます。

  • 0.8%は全年齢の値です。図6は離職理由別の離職率を年齢階級で分けていないため、「40代だけの会社都合離職率は何%か」はこの調査から算出できません。40代の水準を示す数字ではなく、労働者全体での頻度の桁を示す数字として読んでください
  • いずれも全産業の数値であり、SES・情報サービス業に限定した年齢別の内訳は公表されていません
  • 「会社都合」の内訳(解雇・退職勧奨・事業所閉鎖など)は表5では区分されていません
  • 「事業所側の理由」には出向・出向元への復帰が含まれるため、そのまま解雇の頻度とは読めません

編集部の見立てはこうです。恐怖の総量は、統計で確認できる頻度より大きく膨らんでいます。ただし「増える方向に動いている」のは事実で、備えておく理由は十分にあります

40代の契約が終わりやすくなる構造的な理由

切られやすさの原因は年齢ではなく、商流の位置と、そこで割り当てられる工程です。編集部はこの点で、よく見かける解説と立場が違います。「最新技術を学ばない40代だから切られる」という説明は、原因を全部個人に返していて、なぜ努力が単価に反映されないのかを説明できていません。

公正取引委員会の実態調査(2022年6月29日公表。資本金3億円以下の事業者2万1,000社に依頼し4,739社が回答)から、下層に置かれた会社の姿を4つ挙げます。

  • 担当工程は開発(プログラミング)56.6%に対し、ユーザーへの提案・要件定義は5.5%(n=2,589)
  • 最終下請の68.6%が資本金1,000万円以下
  • 最終下請の44.6%が下請取引依存度90%以上、19.2%は取引先(発注元)が1社のみ
  • 不必要な「中抜き」事業者の存在を感じたことがあるのは中間下請29.2%・最終下請33.5%

同報告書は「多重下請構造下では再委託の都度、中間マージン等が差し引かれるため、下層に行くほど受注金額が低くならざるを得ない」と記述しています。ここから、40代の契約が終わりやすくなる筋道が2本引けます。

  1. 単価の上限が商流で決まっているため、年齢が上がるほど「単価に対して高い」と見える。技術が止まったのではなく、あなたの人件費だけが上がり、単価の原資が上流で削られてから届く構造です。単価と給与の関係はSESの単価相場と単価が給与になるまでの流れで実数を出しています
  2. 上流工程が回ってこないため、単価を上げる材料が経歴に残らない。要件定義に関われるのが5.5%という配分では、17年働いても職務経歴書の1行が増えません

比較として、この業界の賃金カーブを見てください。情報通信業の所定内給与(一般労働者・男女計)は、40代以降で次のように動きます。

年齢階級 所定内給与(情報通信業)
40〜44歳 45万6,800円
45〜49歳 49万1,700円
50〜54歳 49万1,300円(横ばい〜微減)
55〜59歳 51万6,300円(最も高い階級)

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」第5-1表(産業別・年齢階級別。情報通信業・一般労働者・男女計。数値は2025年6月分)

この産業の水準で見れば、40代はまだ上り坂の途中です。50代前半でいったん横ばい〜微減を挟みますが、最も高い階級は55〜59歳で、40代の先に賃金が伸びる余地は残っています。年収490万円前後で頭打ちを感じているなら、疑うべきは自分の能力ではなく、いま身を置いている場所です。

なお、上表の金額は情報通信業という産業に限った系列です。全産業の平均(産業計・男女計)は40〜44歳で36万4,300円、最も高い55〜59歳でも39万6,200円です(同調査)。情報通信業は全産業より約9万円高い水準にあり、この2つを取り違えると比較の意味が変わります。

そしてもう1つ、時期の要因があります。ハローワーク統計では、情報サービス業の新規求人は2026年3月に前年同月比▲17.1%(パートを除くと▲18.7%)、情報通信業全体では2025年8月以降8か月連続で前年割れです(厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年3月分)。年齢の話に見えていた現象の一部は、時期の話です。

では、現場が細る局面ではどの層に待機が生じやすいのでしょうか。編集部は「受注経路が特定の元請けに依存している下層の会社ほど待機が生じやすい」と見ています。最終下請の44.6%が下請取引依存度90%以上・19.2%が発注元1社のみという分布(公取委2022)を踏まえた見立てで、統計で直接検証された因果ではありません。

「40代はSESしかない」は求人データと合っているか

編集部は「SESしかない」を支持しません。求人の数字は、職種によって最大5倍のばらつきを示しています

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagが公表する有効求人倍率(令和6年度)は次のとおりです。

職種(job tagの区分) 有効求人倍率(令和6年度)
プログラマー 0.94倍
システムエンジニア(受託開発)・(Webサービス開発) 2.57倍
システムエンジニア(基盤システム) 2.28倍
プロジェクトマネージャ(IT) 2.1倍
システムエンジニア(組込み、IoT) 4.77倍

出典:厚生労働省job tag 各職業ページ(2026年8月時点の掲載内容。令和6年度職業安定業務統計に基づく)

IT職種別の有効求人倍率の比較グラフ(プログラマー0.94倍〜組込み系4.77倍)

読み方はこうです。「40代に案件がない」のではなく、いまの経歴の置き方で釣れる案件が、倍率1倍前後の帯に集中している。スカウトサイトに登録していて同単価・同内容のSES案件ばかり届くなら、それは市場があなたに付けた上限ではなく、経歴の見え方に対する市場の応答です。

年収の差も同じ構図で説明できます。job tagの在職者データでは、開発系6職業の平均年収578.5万円に対し、システムエンジニア(基盤システム)・ITプロジェクトマネージャの区分は889万円です(いずれも令和7年賃金構造基本統計調査に基づく)。約310万円の差は能力差ではなく、担う工程と商流の位置の差です。

行き先の候補も、下請の実態から逆算できます。公取委調査によると、下請として扱うことの多い案件は基幹システム(会計・人事・生産管理・在庫管理等)の受託開発が39.5%、発注元は製造業21.1%・金融業/保険業14.4%です。

編集部は、あなたが保守している基幹システムの発注側を移動の第一候補と見ています。基幹システムを外注している製造業・金融業の側には、その業務を理解して発注をコントロールする役割が必要になるからです。ただしこれは商流の分布から編集部が導いた見立てであり、社内SE・内製要員の求人がどれだけあるかを示すデータではありません。業務知識は、商流を上ったときにだけ値札に換わる資産です。

「動いたら年収が下がる」という前提にも、数字を当てておきます。2024年に転職した40〜44歳の賃金変動は「増加」45.9%・「減少」29.0%で、増加が減少を16.9ポイント上回っています(45〜49歳は増加46.4%・減少23.8%)。出典は前掲・令和6年雇用動向調査結果の概況の表6(全産業)です。

上がる保証がある話ではありませんし、家族と住宅ローンがある40代にとって減少29.0%は無視できない数字です。それでも「40代が動けば下がるのが普通」は、統計と合っていません。

ただし正直に書きます。ハローワーク経由の就職は、この職種ではほとんど成立していません。令和8年3月の情報処理・通信技術者は、有効求人50,307人に対して就職件数が461件でした(厚生労働省「一般職業紹介状況」参考統計表7-1)。

比率にすると約0.9%ですが、これは編集部算出の参考値です。月末時点のストックである有効求人数で、月間フローの就職件数を割ったものであり、参考統計表に公表指標として載っている数値ではありません。

比較の基準を置くと意味が出ます。同じ月・同じ計算方法で職業計を出すと約5.5%(就職件数114,632件÷有効求人2,073,013人。同じく編集部算出)で、IT職はその6分の1以下です。

求人票を眺めて相場を測るのではなく、スカウトとエージェント面談で測るのが、この職種の測り方になります。詳しい手順はエンジニアの市場価値の測り方にまとめています。

切られる前に40歳がやっておく3つのこと

順番が重要です。転職活動より前に、値札の実測が来ます

  1. 値札を測る。スカウトサービスに職務経歴を置き、届くオファーで定点観測する。エージェント面談で「今の自分にいくらの求人を紹介できるか」を聞く。転職の意思が固まっていなくてもかまいません。切られてから測ると、比較する時間がなくなります
  2. 自分の商流と単価を確かめる。何次請けか、契約はいつまでか、更新の判断は誰がするのか。取引先が1社のみという最終下請が19.2%ある世界では、現場の終了と会社の売上減が同時に来ることがあります
  3. 経歴を「工程」で棚卸しする。「Java 17年」ではなく、要件定義・基本設計・詳細設計・実装・テスト・運用のどこを、どの規模で、何人を動かして担当したかに分解する。採用側は年数ではなく工程と規模を見ています

この3つを終えた後の打ち手(何を積み、どこへ置き直すか)は40代エンジニアの生き残り方を5ステップの手順にした記事で扱っています。本記事は「切られる側の構造」に絞り、そこから先の実行手順は分けています。

編集部メンバーは採用側として100人以上と面接してきました(領域はエンジニア採用ではなくWebマーケティング領域です)。職種を問わず、経歴書で判断が止まるのは「切られた事実」ではなく「何をやってきたか書かれていない」ときでした。

契約終了の経歴自体が減点材料になるわけではありません。プロジェクト縮小による終了は、SESでは日常的に起きることだからです。採用側が実際に見ている評価軸は「40代エンジニアは使えない」の正体を採用側の3基準から解説した記事で分解しています。

もうひとつ、編集部の失敗も書いておきます。編集部メンバーが2012年に初めてスカウトを受けたとき、比較対象を持たないまま給与と会社の規模だけで1社に即決しました。年収は大きく上がりましたが、入社後に人間関係の相性で苦労しました。追い込まれてから動くと、比較という工程が丸ごと省略されます

なお、40代の編集部メンバーには現在もスカウトが継続的に届いています。職種はWebマーケティング領域でエンジニアではないため、40代のSESに何通届くかの証拠にはなりません。それでも「40代になるとスカウトが止まる」が事実ではないことの実例にはなります。定点観測は、今日から始められる唯一の準備です。

なお、自分の意思でSESを出る場合の段取り(退職の申し出時期や引き継ぎ)は自分からSESを辞めるときの5ステップで扱っています。本記事は「自分の意思と関係なく切られる場合」に絞っています。

契約終了・解雇を告げられたときに確認すること

告げられた直後は情報を集める時間です。以下を、口頭ではなくメール・書面で残る形で確認してください。

  • どの契約が終わるのか(常駐先との契約か、自社との雇用契約か)
  • 終了日はいつか。自社との雇用契約が終わるなら、解雇予告(30日前)または解雇予告手当の扱いはどうなるのか(労働基準法20条1項)
  • 待機に入る場合、その期間の賃金はどう計算されるのか(労働基準法26条の6割は最低ライン)
  • 退職を勧められている場合、それは解雇なのか退職勧奨(あなたが同意して初めて成立するもの)なのか
  • 離職票に記載される離職理由(会社都合か自己都合か)

退職届・合意書へのサインを、その場で求められても急ぐ必要はありません。いったん持ち帰り、事実関係を書き出してから判断してください。

制度の当てはめは個別の事情で変わります。解雇の有効性、休業手当、失業給付の扱いなど具体的な判断は、公的窓口・専門家に確認してください。相談先は労働基準監督署の総合労働相談コーナー、ハローワーク、弁護士・社会保険労務士です。本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案への回答ではありません。

よくある質問

案件が決まらないとクビになりますか?

自動的にクビになるわけではありません。案件が決まらない状態は待機であり、雇用契約は続きます。これを理由に解雇するには、労働契約法16条の「客観的に合理的な理由」と社会通念上の相当性が必要です。

経営上の理由による解雇なら、厚生労働省が整理する整理解雇の4要素(人員削減の必要性・解雇回避の努力・人選の合理性・手続の妥当性)が問われます。会社が現場を取れなかったことは、まず解雇回避努力が問われる事柄です。

待機期間中の給料はどうなりますか?

会社の都合で休業させた場合、最低ラインは平均賃金の60%以上の休業手当です(労働基準法26条)。ただしこれは下限であり、月給制の正社員なら労働契約・就業規則で定めた賃金が支払われるのが原則です。一方的に減額されている場合は、労働基準監督署に相談してください。なお、待機期間の平均や上限を示す公的統計は存在しません(2026年8月時点)。

常駐先が「明日から来なくていい」と言えますか?

契約の解除としては可能です。SESの常駐先とあなたの会社が結ぶのは準委任契約で、民法651条1項(民法656条により準委任に準用)により、各当事者はいつでも解除できます。ただしそれは常駐先とあなたの会社の間の話であり、あなたの雇用契約は終わりません。相手方に不利な時期の解除には損害賠償の問題が生じ得ますが(民法651条2項)、これも会社間の清算です。

待機は何か月続くとまずいですか?

「何か月から危険」と示せる公的なラインはありません。編集部が見る基準は期間そのものではなく、次の3点です。①賃金が一方的に減額されているか、②社内に待機者が複数いるか(会社の受注力の問題)、③会社から次の候補案件の情報が出てくるか。①に該当するなら労働基準監督署へ、②③に該当するなら待機中に自分の値札を測り始めることを勧めます。

SESは何歳まで働けますか?

上限を決めた制度はありません。情報通信業の所定内給与は40〜44歳45万6,800円→45〜49歳49万1,700円→50〜54歳49万1,300円と、50代前半でいったん横ばい〜微減を挟みますが、最も高いのは55〜59歳の51万6,300円です(2025年6月分・前掲・令和7年賃金構造基本統計調査の概況。いずれも情報通信業・一般労働者・男女計の値で、全産業の平均ではありません)。上限を作るのは年齢ではなく、担う工程と商流の位置です。年齢そのものに限界があるのかという論点はエンジニア35歳定年説は本当かで検証しています。40代エンジニア全体の生存戦略は40代エンジニアの現在地と生き残り方を公的データで整理した記事で扱っています。

まとめ:切られる前に測る。それが40代の唯一の準備

  • 「クビ」は3階層:常駐先の契約終了(民法651条1項・656条)/待機(労働基準法26条・民法536条2項)/自社の解雇(労働契約法16条・17条1項、労働基準法20条+整理解雇の4要素)。①が起きても③は自動的には起きない
  • 40代で会社都合離職は増えるが稀:会社都合で辞めた人の割合は男性の40〜44歳で7.6%(25〜29歳1.5%の約5倍)。一方、事業所側の理由による離職率は年0.8%(2024年・全産業・全年齢の値。年齢別の内訳は公表されていない)
  • 原因は年齢ではなく構造:下請の担当工程は開発56.6%・要件定義5.5%、最終下請の44.6%が下請取引依存度90%以上(公取委2022)。情報通信業の賃金は40代を通じて上がり、50代前半で横ばい〜微減を挟んだうえで55〜59歳が最も高い
  • 「SESしかない」は求人データと合わない:job tagの有効求人倍率はプログラマー0.94倍〜組込み系4.77倍で最大5倍の差。狭いのは市場ではなく、いまの経歴で釣れる帯

編集部の結論を軸ごとに書きます。年収を最優先する人には、商流を上る移動(元請け・ユーザー企業側の社内SE)を勧めます。job tagの区分でも開発系578.5万円と基盤系・PM系889万円の差があり、原資は工程と商流にあります。

一方で、現職の勤務地や人間関係、家庭との両立に満足していて不満が単価だけの人には、いま動くことを勧めません。実測した値札は、社内の評価面談・単価交渉の材料としても機能します。

いずれの場合も応募前に確認すべきは、行き先の商流(何次請けか・元請け比率)、担当できる工程、常駐の有無、待機時の賃金規定、副業可否です。現職と比較する項目も同じで揃えてください。

使うサービスは役割で分けます。測るためのスカウトサービス1社、経路を確保する大手転職エージェント1社、換金レートを上げるIT特化型エージェント1社の3点構成です。スカウトは求人応募と違い、置いておくだけで値札が定点観測できるので、待機や契約終了の前から動かせます。届いたスカウトの読み方はエンジニア向けスカウトの仕組みと使い倒し方にまとめました。

そして転職するかどうかを決める前に、まず自分の値札を測ってください。切られてから測ると、比較する時間がありません。登録を急かすつもりはありません。測るだけ測って動かない読者も、当サイトにとっては成功です。


参考・出典

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