SESからの転職|行き先より先に決めるのは順番です
SESからの転職で先に決めるのは、行き先ではなく順番です。厚生労働省の調査では、転職した人の66.1%が転職準備活動を「特に何もしていない」と答えています(令和2年転職者実態調査の概況・個人調査)。行き先を探す前に、あなたはこの66.1%の側にいないかを確かめてください。
この記事は、40歳前後・商流の下層で働くSESエンジニアが、動き出す前に踏む順番を扱います。転職先の一覧は載せません。順番が決まれば、行き先は自動的に絞られるからです。
SESからの転職で先に決めるのは、行き先ではなく順番です
結論から書きます。SESからの転職で決めるべきことは3つあり、その3つには順番があります。行き先の候補は、この3つを終えた時点でほとんど絞られています。
- いまの単価と年収を、数字で持つ
- 社外からの値付けを受け取る
- 応募の母集団を、自分で持つ
1と2は在職のまま、費用をかけずに進められます。3に着手できるのは1と2が終わってからで、順番を飛ばすと「提案された求人から選ぶ」だけの活動になります。
なお、この記事はSES企業へ入る側を扱いません。実測すると「SESへ転職」側のクエリは検索数がゼロで、需要のほぼすべてがSESから出る側にありました(判定の根拠は次の節に書きます)。SES企業を選ぶ側に立っている場合は、SESへ入る場合に自分で確認できる項目を読んでください。
SESという契約そのものの仕組みは、ピラー記事のSESという契約の当事者が誰かを整理した記事で解剖しています。本記事はその上に立って、動き方だけを扱います。

「SES 転職」で調べている人の大半は、SESから出る側です
この記事が出る側だけを扱うのは、検索する人の側がそうなっているからです。編集部は2026年9月1日に、ラッコキーワードで「ses 転職」の周辺クエリを3系統(部分一致246件・サジェスト187件・関連質問25件)取得して数えました。
入る側であることが語の上で確定しているクエリは、月間検索数がすべてゼロでした。
| 入る側のクエリ | 月間検索数 |
|---|---|
| sesに転職 | 0 |
| sesへ転職 | 0 |
| ses 未経験転職 | 0 |
| ses 転職 志望動機 | 0 |
| sesへの転職理由 | 0 |
一方、出る側のクエリには需要があります。「sesから転職」210・「ses 転職できない」90・「ses 転職先」70・「sesからの転職」70・「sesから転職 難しい」50という並びです(いずれも月間検索数。2026年9月1日にラッコキーワードで取得)。
Googleの「他の人はこちらも質問」に出る25問も、入る側は0問でした。重要度の高い順に「SESは何年で辞める人が多いですか」「SESから転職するのは難しいですか」「SESから転職はできますか」と並びます。
編集部の判断はこうです。「SES 転職」というクエリは表記の上では両方向に読めますが、実際に検索している人はほぼ出る側にいます。だから本記事は意図を出る側に固定し、入る側の需要は会社選びの記事へ渡しました。
「SESだから転職できない」は、求人統計の側には根拠がありません
求人の統計は、SESという契約形態を数えていないからです。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で職業を検索すると、並ぶのは仕事の中身で切られた区分です。プログラマー、システムエンジニア(受託開発)、システムエンジニア(基盤システム)、プロジェクトマネージャ(IT)といった名前が並びます。編集部が2026年9月1日に開発系・IT系の全区分を確認した範囲では、「SES」という区分は見当たりませんでした。
つまり、求人側があなたを照合するときの単位は契約形態ではなく、仕事の中身で切られた職業区分です。「SESだから」で不利になるのではなく、自分がどの区分の要件に一致しているかで結果が変わります。
区分によって受け入れ口の広さがどれだけ違うかは、別の記事で数字を並べています。職種ごとの求人倍率を並べて年齢の話を検証した記事を先に読んでください。本記事では、そこで扱っていない1点だけを足します。
「上流に行けば需給が緩む」とは限りません
令和7年度の有効求人倍率を見ると、システムエンジニア(基盤システム)は2.24倍、プロジェクトマネージャ(IT)は1.6倍です(厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)各職業ページ。同サイトはこの項目を「ハローワーク求人統計データ」として掲載しています。2026年9月1日に編集部が確認した掲載値)。上流とされる区分のほうが、倍率は低く出ています。なお開発系のなかで唯一1倍を下回るのはプログラマー(0.98倍)です。
「上流に行けば求人が余っている」という言い方は、令和7年度の数字では成り立ちません。ただしこれは1年度分の数字であり、傾向として断定できるものではない、というのが編集部の見立てです。商流を上る移動そのものの判定軸は、上る側の移動を選んだときに確かめることで扱っています。
転職した人の66.1%は、準備活動を「特に何もしていない」
準備をせずに転職した人のほうが多い、というのが公的調査の姿です。厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(2021年11月8日公表・調査時点は令和2年10月1日現在)の個人調査によると、転職者の転職準備活動は次のとおりでした。
- 「特に何もしていない」66.1%
- 「転職準備活動を行った」30.9%
準備活動を行った人の内訳(複数回答)も、偏りがあります。
| 準備活動の内容 | 割合 |
|---|---|
| 産業・職業に関する情報等の収集をした | 42.9% |
| その他 | 22.4% |
| キャリアコンサルティングを受けた | 16.0% |
※この調査は全産業を対象としており、IT・情報通信業に限定した数値ではありません。内訳は複数回答のため、合計は100%になりません。
準備をした3割の人の中でも、最も多いのは情報収集です。自分の値札(市場価値)がいくらなのかを外から受け取る工程は、この選択肢の並びからは読み取れません。
時間の余裕も、あまりありません
同じ調査で、転職活動を始めてから直前の勤め先を離職するまでの期間も見ました。割合が高い順に「1か月以上3か月未満」28.8%、「転職活動期間なし」23.6%、「1か月未満」18.3%と並びます(前掲・令和2年転職者実態調査の概況)。上位3つがいずれも3か月未満の側に集まっている、という分布です。
活動を始めてから離職するまでが短い側に寄っているなら、その途中に測定を挟む余地は小さくなります。だから測定は活動の中ではなく、活動を始める前に済ませておく必要があります。
具体的には、いまの単価と年収を数字で持つのが1つ目です。単価の水準は1人月にいくら付いているかを確かめる記事、年収の水準はSESで働く人の年収の水準をまとめた記事に置いてあります。社外からの値付けを受け取る手段は、測る工程だけを切り出して解説したガイドにまとめました。

届く求人が偏るのは、あなたの値札ではなく経路の性質です
同じような案件の求人ばかり届くとしても、それは市場があなたに付けた上限ではありません。誰の在庫を見せられているかで、届くものは変わります。
転職エージェント(有料職業紹介)の報酬は、採用した企業から支払われる成功報酬です。だから提案されるのは「世の中の求人」ではなく、その事業者と取引があり、決まれば手数料が入る企業の在庫です。母集団を他人の都合で決められた時点で、どれを選んでも選ばされていることになります。
なぜSES企業の求人が目に付きやすいのかについては、編集部は説明を断定しません。継続的に募集を出す業態だからという説明は成り立ちますが、それを検証した統計を編集部は確認できていません。
事業者側にも、確かめられる材料があります
有料職業紹介事業者には、一定の実績をインターネットを利用して情報提供する義務があります(職業安定法32条の16第3項)。対象は、就職者数・無期雇用就職者のうち離職した者の数・手数料に関する事項・返戻金制度です(同施行規則24条の8第3項1号〜5号)。このうち手数料の実績の公表は2025年4月1日から始まっています。
つまり、担当者の印象ではなく公表データで比べられる部分がある、ということです。※制度の一般的な説明です。個別の事業者の適否は、厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認してください。
母集団を自分側に取り戻す3つの手当て
- 希望を「会社の型」ではなく「担当したい工程」で伝える。型で伝えると、事業者は手持ちの在庫の中から型が合うものを返します
- 入りたい企業のリストを自分で持つ。リストの企業が提案に出てこないなら、直接応募という経路が残ります
- 経路を1本に絞らない。求人の数ではなく、返ってくる情報の質が変わります
3つ目に関連して、編集部の運営メンバーの経験を1つ添えます。転職の際に業界・職種特化型のエージェントを1社加えたところ、一般的な面接対策ではなく、その企業の面接で何が確かめられるかを踏まえた具体的な助言が返ってきました(職種はエンジニア採用ではなくWebマーケティング領域です)。経路を1本足す実利は、求人件数よりもこの種の情報の側にあるというのが編集部の見方です。
社外からの値付けを受け取る経路のうち、在職中の負担が軽いのはスカウトサービスだと編集部は考えます。仕組みと使い方は経路を増やすためのスカウトサービスの位置づけにまとめています。
動き出す時期は、案件の契約更新を待たなくて構いません
待つべきなのは退職日であって、活動の開始ではありません。この2つを分けずに「案件の契約更新のタイミングがベスト」と書く記事が多いのですが、決める対象が違います。
- 退職日:契約更新の区切りに合わせるのは現実的です。引き継ぎが減り、揉めにくくなります
- 活動の開始:待つ理由がありません。前の節のとおり、活動を始めてから離職するまでの期間は短い側に寄っているため、更新を待つと測定の時間ごと失われます
退職を切り出す順番・伝える相手・法律上の区切りは、退職を切り出す段取りと法律の線引きにまとめてあります。本記事は、その手前で始まる活動の側だけを扱っています。
編集部の結論はこうです。動き出す合図は勤続年数でも案件の区切りでもなく、更新の面談で単価が据え置かれた直後です。単価が動かなかったという事実は、その瞬間に確定します。
なお、SES業態に限って求人が増える時期を示した公的データは、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。「何月が有利か」を根拠なく前提にしないことをおすすめします。
よくある質問
SESから転職するのは難しいですか?
難しさの中身は、SESという契約形態ではなく職業区分との一致度で決まります。求人統計はSESという単位で人を数えておらず、プログラマーやシステムエンジニアといった仕事の中身の区分で集計されているためです。
自分の経歴がどの区分の要件と一致するかを先に確かめてください。区分ごとの求人の厚みは区分別の求人倍率を実数で並べた記事にあります。
SESの常駐先(客先)に転職することはできますか?
まず前提として、あなたと常駐先の間には契約がありません。SES契約は自社と常駐先(または間に入る会社)の間で結ばれる準委任契約で、あなたはその当事者ではないからです。
参考になる条文が1つあります。労働者派遣の場合、派遣元事業主が「正当な理由がなく」派遣先での雇用を禁ずる契約を結ぶことは、労働者派遣法33条1項・2項で禁じられています。ただし同条の名宛人は派遣元事業主であり、対象は労働者派遣です。
SESとして結ばれている契約が準委任であれば、同条がそのまま当てはまるとは限りません。実態が労働者派遣と評価される場合の扱いまでは、編集部は原典で確認できていません。契約書に引き抜きに関する条項がある場合は、都道府県労働局や弁護士等の専門家に確認してください。準委任と派遣が分かれる基準は派遣かどうかで適用される法律が変わる理由で扱っています。
SESは何年目で動くのがよいですか?
年数は判断材料になりません。編集部の答えは、更新の面談で単価が据え置かれた直後に動き始める、です。
SES経験は職務経歴書にどう書けばよいですか?
常駐先の社名を出さずに書ける形が決まっています。書き方は案件をまたいだ経験を1枚に収める書き方にまとめてあります。書類を通過したあとに控える常駐先との顔合わせについては、常駐先との顔合わせの位置づけを扱った記事を参照してください。
同じSES業態の会社へ移るのは、転職として意味がありますか?
意味がある場合があります。不満の原因が商流の深さにあるなら、業態を変えなくても取引の位置が変われば条件は動くためです。この論点はとどまるか出るかを軸ごとに言い切った記事で扱っています。
まとめ:順番を決めれば、行き先は絞られます
- SESからの転職で先に決めるのは行き先ではなく順番。①いまの単価と年収を数字で持つ→②社外からの値付けを受け取る→③応募の母集団を自分で持つ
- 「SES 転職」を調べる人はほぼ出る側にいる。入る側のクエリは検索数がゼロだった(2026年9月1日実測)
- 「SESだから転職できない」は求人統計の側に根拠がない。統計はSESという契約形態ではなく職業区分で人を数えている
- 転職した人の66.1%は準備活動を「特に何もしていない」。準備した3割の中でも最多は情報収集で、値札を測る工程は見えない(令和2年転職者実態調査・全産業)
- 活動を始めてから離職までの期間は短い側に寄っている。測定は活動の中ではなく、活動の前に済ませる
- 届く求人の偏りは経路の性質。母集団は自分で持つ
この順番をおすすめするのは、年収を下げられない事情がある人です。測ってから動けば、下がる提案を断る根拠が手元に残ります。おすすめしにくいのは、健康や尊厳が削られている状況にある人で、その場合は測定より先に離脱の準備を優先してください。判断の基準は退職側の記事に置いてあります。
応募の前には、行き先の商流の位置・単価の透明性・残業の実態・副業の可否を確認してください。現職とは「これまで積んだ経験年数を、どちらの商流で次の10年に伸ばすか」で比較します。
使うサービスは、測る役のスカウトサービスを1社、換える経路として大手エージェントを1社、条件の詰めに使う特化型を1社という構成が基本です。ただし、直近1年以内に値札を実測していて、いまの単価と昇給の根拠を会社から示されている人は、いま登録する必要はありません。
それ以外の人は、転職を決めきれていなくても構いません。動くと決める前に測る——順番の1番目と2番目は、在職のまま今日始められます。
参考・出典
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(2021年11月8日公表。調査時点は令和2年10月1日現在): https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-gaikyo.pdf ※本記事で用いたのは個人調査の2項目です。①転職準備活動(「特に何もしていない」66.1%/「転職準備活動を行った」30.9%/内訳〔複数回答〕は「産業・職業に関する情報等の収集をした」42.9%・「その他」22.4%・「キャリアコンサルティングを受けた」16.0%)②転職活動を始めてから直前の勤め先を離職するまでの期間(「1か月以上3か月未満」28.8%・「転職活動期間なし」23.6%・「1か月未満」18.3%)。数値は同概況の結果の概要の本文記述から引いており、対応する統計表は個人調査 表18(転職準備活動の内容別転職者割合)・表19(転職活動を始めてから直前の勤め先を離職するまでの期間階級別転職者割合)です(表番号・表題は同概況の統計表一覧で確認)。いずれも全産業の数値であり、IT・情報通信業に限定した統計ではありません。(2026年9月1日に編集部が原典で確認)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)各職業ページ。本記事で参照したのは有効求人倍率(令和7年度)で、同サイトはこの項目を「ハローワーク求人統計データ」として掲載しています。プログラマー0.98/システムエンジニア(基盤システム)2.24/プロジェクトマネージャ(IT)1.6。職業一覧に「SES」という区分がないことも同サイトのカテゴリー検索(開発系・IT系)で確認しました: https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/313 /https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Search/SearchResult?search_type=categories&code=009 (2026年9月1日に編集部が確認した掲載値)
- e-Gov法令検索 労働者派遣法(派遣労働者に係る雇用制限の禁止=33条1項・2項。いずれも「正当な理由がなく」を要件に含む): https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 (2026年9月1日に編集部が条文を原文で確認)
- e-Gov法令検索 職業安定法(有料職業紹介事業者の情報提供義務=32条の16第3項): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 /同施行規則(提供すべき事項=24条の8第3項1号〜5号〔1号:就職者数/2号・3号:離職者数/4号:手数料に関する事項/5号:返戻金制度〕): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012 (2026年9月1日確認)
- 厚生労働省 人材サービス総合サイト(許可・届出事業者、手数料・離職者数の確認先): https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/
- キーワードの月間検索数・検索意図の分布は、編集部が2026年9月1日にラッコキーワードで取得した実測値です(部分一致246件・サジェスト187件・関連する質問25件)。
