商流とは?IT業界で自分が何次請けかを見抜く6項目
商流とは、仕事の発注と代金の支払いが、契約をたどって現場まで下りてくる経路のことです。IT業界では「自分は何次請けか」を指す言葉として使われます。位置を決めているのは、間に入った会社の数ではなく、間に結ばれた契約の本数です。
この記事では、営業担当の回答を待たずに、手元の書面と公開情報から自分の位置を1段ずつ確かめる手順を示します。根拠に置くのは民法644条の2第1項です。再委託(復委任)は、許諾を得たときかやむを得ない事由があるときでなければできない、と定めた条文です。
あわせて、どこまで確定できてどこからは確定できないのかと、答えが返ってこないときの読み方も書きます。条文は2026年9月1日に編集部がe-Gov法令検索で原文を確認しました。
商流とは?契約をたどって発注と代金が流れる経路のこと
商流とは、1つの案件について結ばれた契約が数珠つなぎになった、その連なり全体のことです。仕事の発注と代金の支払いは、この連なりをたどって上から下へ流れます。IT業界では、連なりのどこに自社がいるかを「何次請けか」と呼びます。数えるべき単位は会社ではなく、契約です。
現場で使われる言い方を先に整理します。呼び方は場面によって揺れますが、指しているものは同じです。
| 言い方 | 指しているもの |
|---|---|
| エンド(エンドユーザー・発注元) | システムを実際に使い、費用を出す会社 |
| エンド直・直請け | 自社が発注元と直接契約している状態 |
| 元請け・一次請け | 発注元から直接受注した会社 |
| 二次請け・三次請け | さらに委託を受けた会社。数字は間に挟まった契約の順番を表す |
| 多段商流 | 契約が何本も連なった状態 |
| 商流が深い/浅い | 契約の本数が多い状態/少ない状態 |
注意したいのは、元請けと一次請けの使い分けです。IT業界の会話では、この2つはほぼ同じ意味で使われます。編集部が上位12件を読んだ範囲でも、両者を区別している記事と同義に扱う記事の両方がありました。語で数えると、人によって答えがずれます。

位置を決めているのは会社の数ではなく契約の本数
商流が1段深くなるとき、法的には何が起きているのか。手がかりになるのが民法644条の2です。委任を受けた側が、その事務をさらに他人へ委ねる場面を定めた条文です。
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
(引用:e-Gov法令検索 民法644条の2第1項〔見出し「復受任者の選任等」〕/2026年9月1日に編集部が原文を確認)
SES契約は準委任にあたり、委任の規定が準用されます(民法656条)。ですからこの条文は、SESの再委託にも当てはまります。商流が1段伸びるということは、この「復受任者の選任」が1回起きたということです。
ここから言えるのは、商流は勝手には伸びないということです。1段増えるたびに、許諾かやむを得ない事由のどちらかが介在している——というのが編集部の読み方です。
条文の読み方には注意が2つあります。1つは、同条2項が「代理権を付与する委任」に限られていることです。SESの準委任は通常これに当たらないため、下請の会社が発注元に対して直接の権利義務を持つ、とは読めません。
もう1つは、1項が再委託そのものを禁じた条文ではないことです。許諾を得ればできる、と書かれています。実務では基本契約に再委託の可否を定めるのが通常で、その条項をどう読むかは再委託の定めを契約書のどこで探すかに譲ります。
なお、階層をどう数えるか——会社の数ではなく契約の本数で数えるという定義そのもの——は階層を契約の本数として定義した記事で扱っています。IT業界に何次請けまで存在するのかという実数の話も、そちらにまとめてあります。
何次請けかを見抜くチェックリスト
ここからが本題です。すでに常駐して働いている人が、自分の位置を確かめるための6項目を並べます。確定できるのは、原則として自社の1つ上までです。
| # | 確かめること | どこを見るか | 読み取れること | 限界 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 自社が直接契約している相手の社名 | 注文書・注文請書・個別契約書の宛名 | 自社のすぐ上が誰かが確定する | その相手より上に何段あるかは分からない |
| 2 | その相手が常駐先と同じ会社か | 請求先・入館証の発行元・現場の受付の表示 | 同じなら自社は常駐先の直下。違えば間に少なくとも1社ある | 常駐先が発注元(エンド)とは限らない |
| 3 | 現場に社名がいくつ出ているか | 朝会の出席者の所属・メーリングリストのドメイン・座席の並び | 現場に関わる会社数の下限 | 同じ段に複数社が並ぶことがあり、段数とは一致しない |
| 4 | 顔合わせを何回・誰と行ったか | 参画前の面談の相手の所属 | 間に入った会社数の目安 | 目安にとどまる。1社が複数回出ることも、間の会社が同席しないこともある |
| 5 | 契約書に再委託の定めがあるか | 基本契約書の再委託条項 | 自社の下にもう1段が生まれうるか | 定めの有無は、上に何段あるかを教えない |
| 6 | 「商流制限」が付いているか | 営業担当への確認 | 「何次請けまで」という上限が設定されている場合がある | 法令上の制度ではなく実務の呼び名。公的に確認する方法は、編集部が確認した範囲では見当たらない |

顔合わせの回数は、目安以上には使えません
上位の解説では、面談の回数から商流の深さを推し量る方法がよく紹介されています。編集部はこれを目安として扱い、判定の根拠にはしません。回数は間に入る会社の都合で増減しますし、常駐先が個人を選別しているのかという別の論点にも触れるからです。顔合わせの場そのものについては顔合わせの回数が何を意味するかを扱った記事で扱っています。
書面で確定できること、できないこと
1から6をすべてやっても、商流の全体像は出てきません。出てくるのは自社の1つ上と、現場に見えている会社の数にとどまります。編集部の意見をはっきり書きます——何次請けかを一発で当てようとせず、1つ上を確定させることから始めてください。
理由は2つあります。1つは、自社より上の契約が、あなたも自社も当事者ではない契約だからです。もう1つは、自社の営業担当ですら上の段を把握していないことがあるからです。
答えが返ってこないときの読み方
聞いても答えが返ってこない。ここで多くの人が止まります。編集部の立場は、沈黙は情報ではあっても、証拠ではない、というものです。
まず、答えないこと自体は違反ではありません。会社どうしが結んだ準委任契約の金額や取引先を従業員へ知らせる仕組みを、編集部は条文の中に見つけられませんでした。開示するかどうかは、制度ではなく会社の運用の問題です。そのうえで、確かめる先を次の順に切り替えてください。
- 口頭をやめ、書面の宛名に戻る——注文書や個別契約書の宛名は、誰と誰の契約かが文字で残っている場所です
- 現場に出ている社名を数える——下限にしかなりませんが、数えた事実は手元に残ります
- 公開されている名簿にあたる——自社が労働者派遣や有料職業紹介の許可を持っているかは、公的な名簿で調べられます。引き方はこれから入る会社に商流を尋ねる手順にまとめています
聞いた記録は残しておいてください。いつ・誰に・何を聞き、返答があったかどうか。この4点で足ります。
常駐という働き方の側から現在地を確かめる角度もあります。契約形態の確認や求人票の出し方から見る方法は常駐という働き方の側から現在地を確かめる記事に置いています。
本記事に体験談がないのは、編集部の運営メンバーがWebマーケティング領域の出身で、常駐現場で商流を数えた側にいたことがないためです。代わりに置いたのは、条文と上位記事の実地確認です。民法の該当条をe-Gov法令検索の条文APIで1条ずつ取得し、上位12件はすべて開いて見出しと本文を読みました(いずれも2026年9月1日)。
数え終えたあとに開く3つの扉
位置が分かると、次に確かめられることが3つ出てきます。1つ目は金額です。1人月にいくら付いていて、そこから何が引かれるのかは日額と月額の実測値から単価を押さえた記事で公的データを使って分解しています。
2つ目は構造です。IT業界の階層がどこまで深いのか、公的にどこまで数えられているのかは、さきほど挙げた階層の記事にあります。3つ目は適法性で、契約の名目と現場の実態がずれている場合の論点です。
SESという業態そのもの——契約の型、カネの流れ、企業の見分け方——は発注元から給与までを1本の線でつないだ総論にまとめています。本記事は、その総論のうち「自分の現在地」の部分だけを取り出したものです。
現在地の外で、自分にいくらの値が付くかを見に行く
位置が分かっても、それだけで値札(市場価値)が動くわけではありません。数えることは現状の把握であって、次にやるのは、いまの位置の外で自分にいくらの値が付くかを見に行くことです。スカウトサービスに職務経歴を置き、どんな商流の会社からどんな条件で声がかかるかを定点観測してください。
いま転職を決めなくてかまいません。数えた結果を手に持ったまま外の値を見る——この順番が、40歳前後で条件を崩さずに動くための近道だと編集部は考えます。
よくある質問
商流とは簡単に言うと何ですか?
案件が発注元から現場へ届くまでにたどった、契約の道筋のことです。IT業界では「自分は何次請けか」を指す言い方として使われます。会社の並び順ではなく、間に結ばれた契約の本数で数えます。
商流とは契約のことですか?
契約そのものではなく、契約が連なってできた経路のことです。ただし数えるときの単位は契約になります。会社が何社あるかではなく、あなたと発注元のあいだに契約が何本挟まっているかで位置が決まります。
案件の商流とはどういう意味ですか?
その案件が、発注元から自分の会社に届くまでにたどった契約の経路のことです。同じ会社に所属していても、案件ごとに商流の深さは変わります。「うちは二次請け」と会社単位で覚えるのではなく、いま入っている案件ごとに数えてください。
商流が深いとはどういう意味ですか?
発注元から現場までのあいだに、契約が何本も挟まっている状態を指します。本数が少ない状態は「商流が浅い」、自社が発注元と直接契約している状態は「エンド直」と呼ばれます。契約が何段にも連なった状態を指す「多段商流」も、ほぼ同じことを言っています。深いか浅いかは、会社の規模や知名度とは別の軸です。
元請けと一次請けは何が違いますか?
IT業界の会話では、ほぼ同じ意味で使われます。編集部が上位12件を読んだ範囲でも、両者を区別している記事と同義に扱う記事の両方がありました。語で判断せず、自社が誰と契約しているかで位置を確かめてください。
商流制限とは何ですか?
発注元や元請けが「何次請けまで」と上限を設ける取り決めを指す、実務上の呼び名です。編集部が確認した範囲では、法令にこの語や制度は見当たりません。制限があるかどうかは契約と運用の問題なので、営業担当に確認するほかありません。
まとめ
- 商流とは、発注と代金が契約をたどって流れる経路。IT業界では「何次請けか」を指す言葉として使われる
- 位置を決めるのは会社の数ではなく契約の本数。1段伸びるということは、民法644条の2第1項がいう「復受任者の選任」が1回起きたということ
- 同条2項は「代理権を付与する委任」に限られるため、下請の会社が発注元に直接の権利義務を持つとは読めない
- 確認は6項目。ただし確定できるのは、原則として自社の1つ上まで
- 現場に出ている社名の数と顔合わせの回数は、下限や目安にとどまる
- 「商流制限」は実務の呼び名で、編集部が確認した範囲では法令上の制度ではない
- 答えが返ってこないときは、口頭から書面と公的な名簿へ切り替える
- 数え終えたら、いまの位置の外で自分にいくらの値が付くかを測る
商流は、当てるものではなく数えるものです。1段ずつしか確かめられないという不便さは、裏を返せば、1段ずつなら誰でも確かめられるということでもあります。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(復受任者の選任等=644条の2〔第1項=許諾又はやむを得ない事由がなければ復受任者を選任できない/第2項=代理権を付与する委任に限る〕、準委任=656条〔委任の節の規定を準用〕。2026年9月1日に編集部が条文APIで1条ずつ原文を確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
