商流飛ばしとは?混ざった3つの行為を条文で分けて読む
商流飛ばしは、現場では3つの別々の行為をまとめて指す言葉として使われています。あいだの会社を通さずに直接契約しようとする動き、という点では共通していますが、動く契約の種類が違います。会社どうしの取引経路を変える話なのか、あなた自身が移る話なのかで、関わってくる約束も相談する先も変わります。
この記事では、その3つを先に分けたうえで、損害賠償と独占禁止法がどこにかかりうるのかを条文で確かめます。引くのは民法415条1項と416条1項・2項、独占禁止法19条と45条1項の4か条です。4か条とも、2026年9月2日に編集部がe-Gov法令検索で原文を開いて確かめました。
なお、個別の事案が違法なのか契約違反なのかを、編集部は判定しません。この記事が示すのは、判断の枠組みと相談できる窓口までです。
商流飛ばしとは?あいだの会社を通さず直接契約しようとする動きのこと
商流飛ばしとは、あいだに入っている会社を通さずに発注元や上位の会社と直接契約しようとする動きに、現場が付けた名前です。指しているのは、いま何本かある契約の線を引き直そうとする動きです。会社の数が減るのではなく、契約の本数が減ります。
同じ動きは「商流外し」「商流抜け」とも呼ばれます。ただし「商流 外し」で検索したときに出てくる10件のうち、IT・SESの文脈は4件で、残る6件は物流・商社・製造の話でした(2026年9月2日に編集部が上位10件の見出しを取得して数えた結果)。同じ言葉が、業界をまたいで別の場面で使われています。
この語が置かれているのは、法令ではなく現場の会話の側です。編集部は2026年9月2日に、e-Gov法令検索で関係しそうな条文を引きました。そこに並んでいたのは「債務の不履行」「不公正な取引方法」といった別の言葉です。現場の呼び名と条文の言葉は、1対1では対応していません。
ここが最初のつまずきどころだと編集部は考えます。「商流飛ばしは違法か」という形で問いを立てると、編集部が引いた条文にその語が出てこない以上、答えが返ってこないからです。先に必要なのは、その動きがどの契約を動かそうとしているのかを見分けることです。
なお、いま自分が何段目にいるのかを確かめる手順は本記事では扱いません。書面の宛名や現場の社名から位置を割り出す方法は、何段目にいるのかを手元の材料から特定する記事にあります。
同じ言葉で呼ばれている3つの行為を、先に分けます
この言葉が指しているものは、動く契約の種類で3つに分かれます。呼び名は1つでも、当事者が違います。下の表で、どの契約が動くのかを並べます。
| 呼ばれ方の中身 | 動くのはどの契約か | 当事者は誰か |
|---|---|---|
| ① 会社どうしの取引経路を変える | 自社と、あいだの会社・発注元とのあいだの契約 | 会社と会社。働いているあなたは当事者ではありません |
| ② あなたが転職して、上位の会社に入る | あなたと会社のあいだの労働契約 | あなたと、いまの勤務先・移る先 |
| ③ あなたが退職して、個人で直接契約する | あなた個人と発注元のあいだの業務委託契約 | あなた個人と発注元 |
上位の解説は、この3つを分けずに「商流飛ばし」の一語で扱っています。編集部が本文を開いた3件も、報復やペナルティの話に進む前に当事者を確定させてはいませんでした。分けないまま是非を論じると、自分に関係のない話まで自分の問題として読むことになります。
この記事のためにやったのは、条文を開くことと、検索結果を1件ずつ数えることでした。編集部の運営メンバーが職域にしてきたのはWebマーケティングで、常駐先から直接契約を持ちかけられた経験も、その相談を受けた経験もありません。数えた内訳は、上位10件の見出し全件と、そのうち3件の本文です。
①は、あなたの会社の営業が担当する取引の話です。常駐先で顔を合わせている相手とのやり取りが、そのまま会社の意思表示になるとは限りません。営業がどこまでを受け持っているかは、取引を動かす担当の受け持ち範囲を分けた記事で分けて扱っています。
②と③は、あなた自身が当事者になる話です。②は雇用の乗り換え、③は雇われない働き方への移行で、確かめるべき書面が変わります。同じ「直接契約」でも、①なら会社の書面、②③ならあなたの書面を見ることになります。
本記事は、いま会社に雇われている技術者を主語にしています。すでに個人で契約している人に適用される取引のルールは、対象になる事業者の範囲が別に定められているため、この記事では扱いません。

損害賠償が問題になるのは、契約を結んだ当事者どうしのあいだです
お金の請求ができるのは、その契約を結んだ相手に対してだけです。約束を守らなかったときに何が起きるかは、民法が2か条で定めています。まず、賠償を請求できる場面の条文です。
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(引用:e-Gov法令検索 民法415条1項〔見出し「債務不履行による損害賠償」〕/2026年9月2日に編集部が原文を確認)
読むときに落とせないのが、ただし書きの部分です。契約の内容や取引上の社会通念に照らして、債務者の責めに帰することができない事由による不履行なら、この請求はできないと書かれています。「約束を破ったら必ず賠償」とは書かれていません。
次に、賠償できる範囲の条文です。こちらは1項と2項が対になっています。
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。(1項)
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。(2項)
(引用:e-Gov法令検索 民法416条〔見出し「損害賠償の範囲」〕/2026年9月2日に編集部が原文を確認)
原則は「通常生ずべき損害」で、特別の事情による損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限られます。つまり、金額の考え方に枠がないわけではありません。ただし、何が通常なのかを決めるのは条文ではなく、個別の事情を見た裁判所です。
もう1点、条文が誰に向けられているのかを確かめておきます。この2か条が向いているのは、その契約を結んだ当事者どうしです。 ①のように会社と会社が結んだ契約について問題になるなら、請求が向かう先も会社であって、常駐しているあなた個人ではありません。
あなた自身が自社との労働契約で違約金を求められる場面は、これとは別の枠の話になります。そこで根拠になる条文は退職と違約金の定めを条文で整理した記事にまとめてあります。会社どうしの賠償と、あなたに向かう請求は、別々に確かめてください。
独占禁止法の名前が出てくる場所と、判断する主体
この法律に条文はありますが、当てはまるかどうかを決めるのは編集部ではありません。「商流飛ばし 独占禁止法」は月40回検索されている組み合わせです(2026年9月2日に編集部が実測)。取引先を選ぶことへの制限が競争のルールに関わる論点だからだ、と編集部は見ています。
条文そのものは短いものです。編集部が開いた本文は、1文だけでした。
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
(引用:e-Gov法令検索 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条/2026年9月2日に編集部が原文を確認)
短いのは、何が「不公正な取引方法」に当たるかが別のところで定められているためです。その中身を編集部は原典で確かめていないため、この記事では踏み込みません。したがって、あなたの案件がこの条文に当たるかどうかも書きません。
では、誰が決めるのか。同じ法律には、違反の疑いを申し出る先を定めた条文があります。
何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
(引用:e-Gov法令検索 同法45条1項/2026年9月2日に編集部が原文を確認)
「何人も」と書かれているので、当事者でなくても報告はできます。ただし、報告できることと違反が認定されることは別です。編集部は、この条文が誰のどの行為に当たるのかを判定しません。判定するのは公正取引委員会と裁判所です。
相談したいときの窓口は公にされています。公正取引委員会は「相談・申告・情報提供・手続等窓口」のページで、独占禁止法に関する相談と、違反被疑事実の申告の受付を案内しています(2026年9月2日に編集部が確認)。契約や雇用に関わる話が混ざっているなら、あわせて弁護士にも相談してください。
直接取引の制限は、どの書面に置かれるのか
探す場所は2つあり、その2つは別の書面です。1つ目は、会社と会社が結んでいる契約書で、ここに直接取引を制限する取り決めが置かれていることがあります。ただし、この書面の当事者はあなたではありません。
2つ目は、あなたと自社のあいだの書類です。労働契約書、就業規則、入社時に署名した書面がこれにあたります。この2つを1つの話として読むと、誰が何を約束したのかが混ざります。
条項の文面を、この記事に例として書くことはしません。実際の書面は会社ごとに違い、例文を先に見ると、自分の書面をその形に当てはめて読んでしまうからです。読むのは、あくまで手元にある実物です。
代わりに、確かめ方だけを書きます。会社間の書面については、写しをもらえなくても項目名で聞くという手が使えます。どの書面に何が並ぶのかは、準委任の書面で先に見る項目の並びにまとめてあります。
なお、あいだに会社が入る仕組みそのものは、個々の会社の判断だけで生まれているわけではありません。何段も連なる状態がどこまで公的に調べられているかは、何段も連なる状態を公的調査の実数で見た記事にあります。
誘われたときに確かめる3つの問い
返事をする前に、話がどの契約の上で進んでいるのかを確かめてください。常駐先の担当者から「直接どうですか」と声をかけられる場面で、編集部が勧めるのは、その場で是非を決めることではありません。次の3つを順に確かめることです。
- その話は、どの契約を動かす話か——会社どうしの取引経路の話なのか、あなたの雇用の話なのか。①なら、決めるのはあなたではなく自社です
- 相手は、その話を書面にできる立場か——口頭のままなら、あとから確かめられる記録は残りません。誰の名前で出せる話なのかを聞いてください
- いまの自社との書面に、どんな取り決めがあるか——在職中と退職後で扱いが変わることがあります。手元の書類を先に読んでください
編集部が勧めないのは、この3つを飛ばして自分ひとりで判断することです。 相手に不利益が及びうる行為を、こちらから勧めることもしません。会社間の契約や退職後の制限が絡む話は弁護士に、雇用に関わる部分は労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口に確認してください。
もうひとつ、編集部の意見を書いておきます。この語で検索している人が本当に確かめるべきなのは、自分がその契約の当事者なのかどうかです。当事者でないなら、経路について何を決めても自分の手では実行できません。先に見るのは自分の置き場所です。

数える側から、測る側へ
経路を変えられるかどうかとは別に、いまの自分に外からいくらの値が付くのかは今日から測れます。①の経路は、あなたの一存では動きません。②と③はあなたが当事者になれますが、動く前に材料が要ります。
その材料が値札(市場価値)、つまり社外から見た自分の値段です。スカウトサービスに職務経歴を置いておくと、どの位置の会社からどんな条件で声がかかるかが定点で見えます。転職を決めなくてかまいません。
測っておくと、誘いを受けたときに「これは良い話なのか」を自分の数字で比べられます。比べる相手がいない状態で判断するより、そのほうが後で後悔しにくいと編集部は考えます。業態そのものの成り立ちを先に押さえたい場合は、稼働時間が売り物になる業態の総説から読んでください。
よくある質問
SESにおける商流飛ばしとは?
あいだに入っているSES企業を通さずに、常駐先や発注元と直接契約しようとする動きのことです。SESでは技術者の稼働が会社間の契約に乗って現場に届くため、その契約を1本減らそうとする動きがこの名前で呼ばれます。呼ぶ側の立場によって、裏切りとも合理化とも言われます。
商流を守らないとどうなりますか?
何が起きるかは、誰と誰のあいだの約束を守らなかったのかで変わります。会社間の契約であれば、条件に反したときの扱いはその契約の中で決まっており、賠償の請求が問題になるときの条文は民法415条1項と416条です。あなた個人と自社の書面については別のルールがかかるため、同じ話として読まないでください。
「商流抜け」とはどういう意味ですか?
あいだの会社が経路から外れることを指す言い方で、「商流飛ばし」とほぼ同じ場面で使われます。外れるのが自分の会社なのか、他社なのかで意味が変わるため、誰が外れる話なのかを先に確かめてください。この語も、条文ではなく現場の会話の側に置かれている言葉です。
商流飛ばしで損害賠償を請求されることはありますか?
請求が向かうのは、その契約を結んだ相手です。会社どうしが結んだ契約について問題になるなら、当事者は会社であって、常駐している技術者個人ではありません。請求できる範囲は民法416条1項が「通常生ずべき損害」を原則とし、特別の事情による損害は2項で予見すべきであった場合に限られています。個別の事案でいくらになるかは、事情を見た裁判所が決めます。
商流飛ばしと独占禁止法はどう関係しますか?
独占禁止法19条は「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」と定めています。ただし、何がそれに当たるかは別のところで定められており、編集部はその中身を原典で確かめていないため当てはめをしません。違反の疑いがあると考えるときは、同法45条1項により、誰でも公正取引委員会に事実を報告して措置を求めることができます。
※本記事は、一般的な制度と条文の説明です。個別の事案がどの条文に当たるのかを編集部は判定できません。あなたの状況に当てはまるかどうかは、専門家または公的機関の窓口で確認してください。
まとめ
- 商流飛ばしとは、あいだの会社を通さずに直接契約しようとする動きに現場が付けた名前。「商流外し」「商流抜け」も同じ場面で使われる
- 「商流 外し」の上位10件のうち、IT・SESの文脈は4件だけだった(2026年9月2日に編集部が数えた結果)。同じ語が業界をまたいで使われている
- 同じ語が指す行為は3つに分かれる。会社どうしの経路を変える話か、あなたが移る話かで、動く契約も相談する先も変わる
- 損害賠償の請求が向かうのは、その契約を結んだ当事者。民法415条1項にはただし書きがあり、責めに帰することができない事由による不履行は請求の対象から外れる
- 賠償の範囲は民法416条1項の「通常生ずべき損害」が原則で、2項の特別の事情は予見すべきであったときに限られる
- 独占禁止法19条は条文としては短く、中身は別のところで定められている。当てはまるかを決めるのは公正取引委員会と裁判所
- 同法45条1項により、違反の疑いは当事者でなくても公正取引委員会に報告できる
- 直接取引の制限を探す場所は、会社間の契約書と、あなたと自社の書面の2つ。混ぜて読まない
- 誘われたときは、どの契約の話か・書面にできるか・自社との取り決めはどうか、の3つを先に確かめる
経路を1本減らせるかどうかは、あなた一人では決まりません。それでも、社外から自分に付く値段は今日から測り始められます。測ることは他人の判断を待たずにできます。経路の話と、自分の値段の話は、別々に進めて構いません。
参考・出典
- e-Gov法令検索 民法(債務不履行による損害賠償=415条1項〔ただし書き=帰責事由がないときは請求できない〕、損害賠償の範囲=416条〔1項=通常生ずべき損害/2項=予見すべきであった特別の事情〕。2026年9月2日に編集部が条文APIで1条ずつ原文を確認し、問いを変えて2回照合。法令ID 129AC0000000089 が民法〔明治二十九年法律第八十九号〕であることは法令番号での照会で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(不公正な取引方法の禁止=19条、違反事実の報告=45条1項。2026年9月2日に編集部が条文APIで1条ずつ原文を確認し、問いを変えて2回照合。法令ID 322AC0000000054 が本法〔昭和二十二年法律第五十四号〕であることは法令番号での照会で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000054
- 公正取引委員会「相談・申告・情報提供・手続等窓口」(独占禁止法に関する相談窓口と、違反被疑事実の申告窓口の案内。2026年9月2日に編集部がページを開いて確認): https://www.jftc.go.jp/soudan/index.html
