SESとSIerの違いは?同じ会社が両方に当てはまる理由
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SESとSIerの違いは?同じ会社が両方に当てはまる理由
SESとSIerの違いは、SESが契約の呼び名、SIerが会社の呼び名だという点にあります。答えている質問が違うため、この2つはどちらか一方を選ぶ関係(排他)ではありません。
つまり、同じ1社が「SIer」でもあり「SES企業」でもある状態が、普通に成立します。この記事では、なぜ両方に当てはまるのかを4つのパターンで整理し、上位の解説記事がほぼ触れていない「自分の会社はどちら寄りか」を確かめる3つの問いまで書きます。条文は編集部がe-Gov法令検索で原文に当たって確認しました。
SESとSIerの違いは「契約の呼び名」と「会社の呼び名」
SESとは、準委任契約(民法656条)にもとづいてエンジニアの労働力を顧客企業に提供する契約・業態のことです。SIerとは、システム開発を企画から運用保守までまとめて請け負う会社の総称です。 前者は契約を指し、後者は会社を指します。
ここから2つのことが導けます。1つは、「SESかSIerか」という二択の問いが、そもそも成立しないということ。もう1つは、1社が両方に当てはまっても矛盾しないということです。
たとえば「大手SIerの現場に、二次請けのSES企業からSES契約で常駐している」という状態を考えてみてください。ここには2社が登場しますが、発注側も、常駐している自分の会社も、どちらもSIerを名乗れます。呼び名が重なるのは、2語が指しているものが違うからです。
この記事は次の順で進みます。①上位の解説記事が置いている「SIer=請負」という等号への反証、②同じ会社が両方に当てはまる4つのパターン、③なぜ求人では別の会社のように呼び分けられるのか、④自分の会社がどちら寄りかを確かめる3つの問い、⑤軸別の結論。SIerという業態そのものの分類・商流・キャリアはSIerとは?種類・商流・キャリアの全体像にまとめています。
「SIer=請負、SES=準委任」という対比は、会社と契約を1つにしている
この対比は、便利ですが正確ではありません。 編集部は2026年8月に「ses sier 違い」の検索上位10件を確認しました。見出しを取得できた7件のうち1件は、見出しレベルで「SIerは請負契約」と等号を置いていました。ほかの2件も、違いの説明を請負と準委任の対比に寄せています。
正確に書くと、こうなります。
- 請負も準委任も、契約の種類の名前です。会社の業態を指す言葉ではありません
- どの契約を結ぶかは、案件ごとに決まります。会社の看板では決まりません
- したがって、SIerが準委任(SES)契約を結ぶことも、請負契約を結ぶことも、どちらも普通にあります
案件ごとの契約が実際にどの書面に書かれているかはSES契約とは?契約書の見るべき8項目で扱っています。
条文で確かめると、区別の軸は「何に対してお金が払われるか」です。請負は「その仕事の結果に対して」報酬を支払う契約(民法632条)で、成果物の完成が報酬の条件になります。一方の準委任は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用するもの(同656条)で、完成の責任は負いません。
このほか、常駐先が直接指揮命令できる契約として労働者派遣(労働者派遣法2条1号)があります。つまり、1つの案件で選ばれる契約は最低3種類あり、その選択は会社の呼び名とは独立しています。 準委任と労働者派遣が働く側にとって何がどう違うかはSESと派遣の違いを派遣法の条文で比較にまとめています。
同じ会社が両方に当てはまる4つのパターン
1社の中で、案件ごとに立ち位置が変わります。 会社が変わるのではなく、案件が変わるだけです。編集部が確認した範囲では、次の4つはいずれも実在します。
| パターン | 会社の立ち位置 | 結ぶ契約の例 | 一般に呼ばれる名前 |
|---|---|---|---|
| ① 元請として開発を一括で受ける | 発注元と直接契約する | 請負(民法632条) | SIer |
| ② 他社の案件に自社の人を出す | 間に1社以上が入る | 準委任(民法656条)=SES | SES企業 |
| ③ 自社が受けた案件に他社から人を入れる | 発注する側に回る | 相手と準委任・請負・派遣のいずれか | SIer(発注側) |
| ④ 案件ごとに①〜③を使い分ける | 案件による | 案件による | 求人票の書き方で決まる |
(この4分類は編集部の整理です。公的な区分ではありません)
同じ会社が①と②を同時に持っていることは珍しくありません。 ある案件では元請として開発を請け負い、別の案件では他社の現場に人を出す——この2つは会社の中で並存します。だから「うちはSIerです」という説明も「うちはSESです」という説明も、どちらも嘘ではないことがあります。
②と③が同じ商流の上でつながっている実数も、公的調査に残っています。公正取引委員会が2022年に公表した実態調査は、下請事業者に受注の経緯を尋ねています(n=2,588)。最多の回答は**「特定のベンダーの協力会社等としての受注」で43.0%**でした。次いで「代表者・従業員の人間関係(コネ・ツテ)を通じた受注」が32.1%です。
- 出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(2022年6月29日公表)。資本金3億円以下の事業者2万1,000社に協力を依頼し4,739社が回答。割合はいずれも「受注者側がそう回答した」数値です
本記事の引用数値は、編集部がこの報告書を要約記事経由ではなく本体PDFで実読し、原文の図表と照合して整備している数値記録から転記しています(2026年8月時点)。
つまり「SES企業がSIerの協力会社として案件を受ける」という関係は、業界の例外ではなく主流の受注経路です。 別々の会社の話ではなく、同じ商流の上下の話だということになります。

では、なぜ求人では「SES企業」と「SIer」が別の会社のように呼ばれるのか
呼び分けているのは法律や統計ではなく、採用や営業の場面の言葉づかいです。 どちらの呼び名も、名乗るための要件や届出があるわけではありません。
このことは公的統計の側からも確かめられます。編集部が確認した範囲では、日本標準産業分類に「SIer」「SES」という区分はなく、どちらの会社も中分類39「情報サービス業」に含まれます。統計上は同じ箱に入るため、公的なデータで両者を切り分けることはできません。
実務的な含意は1つです。「SIerです」「SES企業です」という自己紹介からは、規模も、商流の位置も、担当する工程も、何ひとつ確定しません。 呼び名の比較ではなく、「自分の会社が『どちら寄りか』を確かめる3つの問い」で確かめるほうが早いというのが編集部の立場です。『SIer』という呼び名で何が分かり何が分からないのかはSIerとは?名乗りから分かること・分からないことで詳しく扱っています。
なお、この呼び分けとよく一緒に語られる「自社開発企業」は、受注ではなく自社のサービスを作る会社を指す言葉で、また別の軸です。SESもSIerも受注して作る側にある点では共通しています。
自分の会社が「どちら寄りか」を確かめる3つの問い
どちらか一方に決める必要はありません。分かるのは「どちら寄りか」だけです。 それでも、次の3つに答えられれば、自分の会社の稼ぎ方はかなり具体的に見えてきます。どれも在職中に確認できます。
- 自社の売上は「開発の受注」と「人の稼働」のどちらが主か——完成した成果物に対して支払われる案件が多いのか、稼働した時間に対して支払われる案件が多いのか。営業担当か上長に聞けば分かります
- 自社は発注元と直接契約しているか、間に会社が入っているか——「この案件のエンド(発注元)はどこで、間に何社入っていますか」。答えの歯切れの悪さ自体も判断材料になります。入社前の会社を公的名簿から判定する手順はSES企業の選び方|ランキングを探さずに自分で引く6手順にあります。
- いま自分が入っている案件の契約は、成果物に対してか・稼働時間に対してか——同じ会社でも案件ごとに変わります。会社単位ではなく案件単位で聞くのがコツです
1と2で「人の稼働が主」「間に会社が入る」に寄っていれば、実態はSES企業に近いと考えてよいでしょう。逆に「開発の受注が主」「発注元と直接」に寄っていれば、元請のSIerに近い形です。どちらでもない中間が、実際にはいちばん多いと編集部は考えます。

会社ではなく自分自身の契約を特定したい場合は客先常駐とSESの違い|『SES=常駐』が崩れる4通りの3つの質問を使ってください。本記事の3つの問いが見ているのは会社の受注の形で、あちらの3つの質問が見ているのは個人の契約です。
「SESとSIer、どっちがいい?」——軸別に言い切る
そのままでは答えの出ない問いなので、軸ごとに言い切ります。 前提として、待遇を決めているのは看板でも契約形態でもなく、商流のどこにいるかだというのが当サイトの立場です。
| あなたの軸 | 編集部の結論 |
|---|---|
| 上流工程(提案・要件定義)を経験したい | 発注元と直接契約している会社。看板がSIerかSES企業かは判定材料にならない |
| 単価と分配の透明性がほしい | 単価と商流を開示する会社。開示は法律ではなく会社の姿勢で決まる |
| 所属の安定を重視したい | 特定の発注元への依存度が低い会社。取引先が1社だけの状態を避ける |
| 同じ現場で長く積みたい | 準委任(SES)寄りの案件。ただし現場が続くかは会社間の契約次第で、本人は当事者ではない |
| 年収を上げたい | どちらでもない。決めるのは商流の位置と職種で、看板では決まらない |
新卒や未経験で迷っている場合も、判断軸は同じだと編集部は考えます。入口の呼び名より、「その会社が誰から何を受けているか」を面談で聞けたかどうかのほうが、入社後の経験を左右します。
単価がどう分解されて給与になるかはSESの単価相場と単価・給与の構造で公的データを使って解説しています。商流とカネの流れの全体像は、ピラー記事のSESとは?仕組み・商流・カネの流れにまとめました。
よくある誤解の整理
読者が混同しやすい3点を、誤解→正しい理解→根拠の順に整理します。
誤解1:「SIerに転職すればSESから抜けられる」
抜けられるとは限りません。SIerを名乗る会社の中にも、他社の現場に人を出す働き方は普通にあります。変わるのは会社の呼び名であって、商流の位置ではありません。確かめるべきは、その会社が発注元と直接契約している比率です。
誤解2:「SES企業は開発を受注できない」
できます。準委任契約で人を出すことと、請負契約で開発一式を受けることは、同じ会社の中で両立します。公正取引委員会の調査でも、回答した資本金3億円以下の事業者の40.4%が、自社の位置付けを「元請」と答えています(2022年・n=4,589)。
誤解3:「SESは常駐、SIerは自社勤務」
場所は契約でも会社でも決まりません。公正取引委員会はSESを「準委任契約、常駐型が多い」と記述しており(2022年)、「常駐型である」とは書いていません。SIerの社員が顧客先に常駐する形も普通にあります。
常駐という働き方そのもの——契約・勤務地・キャリアへの影響——は客先常駐とはで扱っています。
よくある質問
SESとSIerの違いは何ですか?
指しているものが違います。SESは契約(準委任)の呼び名、SIerは会社の呼び名です。答えている質問が違うため両者は排他ではなく、同じ会社が両方に当てはまることが普通にあります。「どちらの会社か」ではなく「その会社が誰から何を受けているか」で見るのが実務的です。
SIerとSESはどっちがいいですか?
何を最優先するかで変わります。上流工程を経験したいなら発注元と直接契約している会社、同じ現場で長く積みたいなら準委任(SES)寄りの働き方、というのが編集部の結論です。年収の高さは看板でも契約形態でもなく、商流の位置と職種で決まります。
SES企業とSIerの見分け方はありますか?
社名や求人票の肩書では見分けられません。編集部が勧めるのは、①自社の売上が「開発の受注」と「人の稼働」のどちらに寄っているか、②発注元と直接契約しているか、の2点を聞くことです。多くの会社は両方を持っているため、答えは「どちら寄りか」までしか出ません。
SESとSIerの年収はどれくらい違いますか?
編集部が確認した範囲では、SESとSIerの年収差を示す公的統計は存在しません。 理由は明快で、日本標準産業分類に「SIer」「SES」という区分がなく、どちらの会社も中分類39「情報サービス業」に含まれるためです。年収の水準は看板ではなく、商流の位置と担当工程で見るほうが確かだと編集部は考えます。
SESとSIerは同じですか?
同じではありませんが、対立もしていません。SESが契約、SIerが会社という別の軸の言葉だからです。同じ会社を、契約の側から見れば「SES企業」、業態の側から見れば「SIer」と呼べる——という関係だと理解するのが正確です。
SESからSIerに転職する理由は何ですか?
多くの場合、目的は看板の変更ではなく商流を上って上流工程に関わることです。したがって転職先を選ぶときも、SIerを名乗っているかどうかではなく、提案・要件定義から入っている案件がどれくらいあるかを確認するのが先になります。判断に迷う場合は、辞める前にSESやめとけは本当か?40歳からの判断軸を公的データで検証で軸を整理してください。転職先を業態から絞りたい場合はSIerの種類と商流の見取り図が出発点になります。
まとめ:2語は排他ではなく、同じ会社に同時に付く
- SESは契約の呼び名(準委任・民法656条)、SIerは会社の呼び名。答えている質問が違うため、どちらか一方を選ぶ関係ではない
- 「SIer=請負」という対比は不正確。どの契約を結ぶかは案件ごとに決まり、会社の看板では決まらない(請負=民法632条/準委任=同656条/労働者派遣=派遣法2条1号)
- 同じ会社が①元請として開発を受け、②他社の現場に人を出し、③自社の案件に他社から人を入れる——という立ち位置を並行して持つ。下請の受注経路は「特定のベンダーの協力会社等としての受注」が43.0%で最多(公正取引委員会・2022年)
- 呼び分けているのは採用と営業の言葉づかい。**日本標準産業分類ではどちらも中分類39「情報サービス業」**に入り、公的統計では切り分けられない
- 確かめるべきは看板ではなく、①売上は成果物と稼働のどちらに対して支払われているか ②発注元と直接契約しているか ③いまの案件の契約は何に対してか、の3つ
編集部の運営メンバーの職種はWebマーケティング領域で、SESやSIerでエンジニアとして働いた経験はありません。だからこの記事は体験談ではなく、条文と公的資料、そして検索上位10件を実際に確認した結果だけで書いています。勧める基準は編集方針ですべて公開しています。
「SESかSIerか」で悩む時間は、そのまま「誰から何を受けているか」を数える時間に回してください。 呼び名は名刺で変わりますが、商流の位置は数えないと変わりません。
※本記事は一般的な制度・契約の説明です。自分のケースが法律上どう扱われるかの判断は、都道府県労働局(需給調整事業部門)や弁護士等の専門家に確認してください。
参考・出典
- 公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(2022年6月29日公表。受注の経緯〔n=2,588〕=「特定のベンダーの協力会社等としての受注」43.0%・「代表者・従業員の人間関係(コネ・ツテ)を通じた受注」32.1%/取引上の位置付け〔n=4,589〕=元請40.4%/SESの記述=「準委任契約、常駐型が多い」。割合はいずれも受注者側がそう回答した数値): https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_sw_03.pdf
- e-Gov法令検索 民法(請負=632条〔仕事の結果に対して報酬を支払う〕/準委任=656条〔法律行為でない事務の委託への準用〕): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 労働者派遣法(労働者派遣の定義=2条1号): https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 総務省「日本標準産業分類」(中分類39 情報サービス業。「SIer」「SES」という区分は存在しない): https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm
